「『フェアトレード』という言葉を聞いたことはあるが、説明することはできない」といった人も多いのでは。今回は、市民1人1人が直接参加できる草の根の支援活動「フェアトレード」を紹介しよう。 [松田雅央,Business Media 誠]
ワールドショップ
フェアトレード商品を扱う店はワールドショップ(あるいはフェアトレードショップ)と呼ばれ欧州各地に約3000軒、ドイツ国内で約800軒が営業している。筆者の住むカールスルーエ市のワールドショップが開店したのは1983年のこと。途上国を支援するNPO「第3世界とのパートナーシップ・カールスルーエ」がフォルクスワーゲンのミニバンを使い途上国の商品を売り歩くことから活動を始めた。
ワールドショップ各店の運営は独立しているが以下のようなコンセプトを共有している。
社会と環境への適合
生産-輸入-小売まで、取り引きの透明性
支援者による民主主義的な運営
非営利
積極的な情報提供と啓蒙活動
継続性の重視
魅力ある商品
カールスルーエのワールドショップは開店当初、支援メンバーの個人的なつながりを頼りに途上国から商品を仕入れていた。素朴な指人形(写真1左上)は、ぺルーで教師として働くドイツ人女性がスラムに住む人々の自立を目指して立ち上げたプロジェクトによるものだ。プロジェクトはその後も発展を続け、現在20人の女性が手工業に従事し、幼稚園の設立にもこぎつけた。
ただし個人的な仕入れでは限界があるため、今はフェアトレードを専門に扱う輸入業者(あるいは市民団体)が利用される。多くの製品には生産者の顔と物語が分かるよう小さなパンフレットが添えられ、大量生産の商品にはない深い味わいに満ちている。
完成度の高い木のおもちゃ(写真1左下)は、10~20人が働くインドの工場(MAYA Organic)で作られたもの。空き缶を材料にして作られた楽しいデザインの車や自転車のおもちゃ(写真1右上)はマダガスカルから。エキゾチックなデザインが目を引く食器や置物(写真1右下)はケニアの民芸品だ。
多くの出会いが魅力
ワールドショップ・カールスルーエ店で働くのは正従業員3人と、30人近くのボランティア。収益性の高い商売ではないので正従業員だけでは経営が成り立たない。開店当時からボランティアとして働くブリギッテ・オーゼンベルクさんは人との出会いが店で働く魅力と言う。
店では途上国支援の書籍を貸し出し、課外授業の見学にも利用されるほか、コーヒーコーナーを備えサロン的な場にもなっている。昔は政治的な話題がよく話されていたが、現在は政治色を感じることが減ったそうだ(支援団体もこの店も政治的な立場は中立)。フェアトレード商品の購入は教会組織や自治体が積極的で学生の来店も多い。
次のページ生産者の自立をサポート
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.06.09
2009.06.11