最近、カタログに書いてあるようなことしか語れない営業マンが増えているという。そこで商品語りの達人、スミ利文具店の藤井稔也さんに商品を紹介するコツを聞いてきた。 [郷好文,Business Media 誠]
「近ごろ、商品を語る営業マンが減ったよな……」
コンサルティングの仕事でお邪魔している会社の方が、フトこう言った。自分が売る商品なのに“カタログ語”以上のことを語れない。技術も素材知識も勉強不足。開発背景さえ知らない。ぐっとひき付ける印象深いひとことがない。営業活動はカタログ配布だけ、何でも聞ける安心感のある営業担当が少なくなった。
語り不足は印刷カタログやWebサイトにも広がる。スペックだけの商品紹介、メーカー支給の画像転載だけのサイト。買わせたいという執念が伝わらない。そこで文具メーカー以上の商品語りで知られる、滋賀県近江八幡市のスミ利文具店の藤井稔也(ふじいとしや)さんに“商品を語る”コツをうかがってみた。
2900字以上に上る商品紹介
――藤井さん、商品紹介を作る時、どんなことに留意されていますか?
藤井 まず、商品に対して自分自身が知りたいと思ったことを書くようにしています。写真撮影も「自分が消費者の立場ならこんな部分が見たい」と思う部分を掲載しているつもりです。デザイン性やインパクト重視のカッコいい写真ではなく、視点にはこだわっているつもりです。
2009年4月に出荷が始まったばかりのプラチナ『超微粒子 水性顔料インク ブルーインク』。万年筆ファンに喝采を浴びたコアな機能を持っている。通常の万年筆インク(=染料系)とは異なる顔料(=水に溶けない色材)が配合されている。藤井さんはどう紹介しているのか?
従来は黒しかなかったこのタイプに待望の青が発売され、顔料系インクのメリット(一度乾いたら水に流れない・インクのにじみや裏抜けが少ない・筆跡の保存性の高さなど)を紹介する。そのため筆跡を2つの用紙(画像左のライフ原稿用紙と画像右の輸入コピー紙)に書いて、鮮明度や色を比較。さらに耐水性を実験するため、書いた紙に水をかけて、色落ちやにじみまで報告する。
さらに顔料インクの美しさの素、“超微粒子”の特性をこと細かに記す。「水分が少ないのでペン先をドライアップ(乾燥)させがちなこと」「使わないと万年筆の故障につながるので、年に1度年賀状を書くようなユーザーには向かないこと」「だから、日頃からきちんと万年筆を手入れできること」「使わない場合は完全に水洗いをすること」、そしてプラスアルファの注意事項(キャップの開閉・メンテナンスの仕方など)まで、藤井さんは詳細に書き込む。
1個1575円のインキの商品紹介の文字数、実に2900字以上に及ぶ。
次のページカタログに掲載するのではなく、買ってほしいから書く
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.05.22
2009.05.26