愛読していた『エスクァイア日本版』が休刊の方針を示したことにショックを受けた筆者。エスクァイアに限らず、休廃刊する雑誌や自己破産を申請する出版社は後を絶たない。出版不況を生き抜くにはどうすればいいのか、その策を考えてみた。 [郷好文,Business Media 誠]
出版界には本当に良いニュースがない。2月には『エスクァイア日本版』が休刊の方針を示し、カルチャー系の読者層に激震が走った。20年以上にわたりアートや文化をけん引してきたクオリティマガジンだが、5月発売号がラストになるという。思わず手を合わせてしまった。私はここ数年は数冊しか買っていなかったものの、1990年代を通じて同誌を愛読していたからだ。
エスクァイアの休刊は、不況によって赤字がかさんだことが原因と推測される。だが親会社のレントラック、さらにその親会社CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の“経営ポートフォリオ”上の判断とも考えられる。世界同時不況が雑誌という媒体の息の根を止めそうだからだ。2008年の電通『日本の広告費』によると、マスコミ4媒体(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)はすべて前年比マイナス、中でも雑誌は11%減と厳しい。
雄鶏社倒産の衝撃
さらなる衝撃は4月下旬、手芸書で有名な雄鶏社が東京地裁へ自己破産を申請したというニュースだ。若いころに手づくり大好き少女だった婦女子層に困惑の波紋が広がった。1945年創業の雄鶏社の本、日本津々浦々のお宅の書棚に最低1冊は眠っているはずだ。
私は手編みはしないが、手作りの縫い物が好きな中年男子である。雄鶏社倒産のニュースを耳にして、近所の書店に立ち寄った。せめて1冊でも購入して支援しようと手芸書のコーナーを見回したが、なぜか見当たらない。「もう回収されてしまったのだろうか」と書店を後にしようとすると、店頭で段ボールに入った本の数々を見つけた。倒産の余波だろうか、何と雄鶏社の本が30%オフのセールとなっていた。写真を撮らせてもらい1冊購入。和柄の巾着袋でも縫うとするか。
保護してあげなくちゃいけなかったのに!
溺愛したエスクァイア、そして敬愛する向田邦子女史も勤めていた雄鶏社の消滅。この2つの出来事に共通する心理とは、「私が保護してあげなくちゃいけなかったのに!」という後悔であり自戒である。私にとって、2つともがそういう存在だった。
そして、それは私だけの気持ちではなかったようで、「エスクァイア日本版を復刊させよう!」という運動がある。署名が徐々に集まってきており、友永文博編集長も感謝のメッセージを寄せている。私ももちろん署名した。
手作り婦女子も声を上げてはどうか。イマドキの世の中、手作りよりも買う方が安いし、わざわざ作る時間もないかもしれない。「ながら」ではできない手編みは、今のライフスタイルには合わないかもしれない。でも、エコの広まりや不況は、手作り層開拓にプラス要因のはず。手芸用品店のユザワヤやオカダヤは歩くだけで楽しい。携帯やゲームや化粧や飲食などはしないで、昔の女子学生のように編み物する光景が広がれば、サツバツとした通勤電車もなごやかになるだろう。
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