2007.07.25
キャリアの変化と危機
増田 崇行
株式会社クエストコンサルティング 代表取締役
2007年問題を背景に労働市場は活況を呈している。 「売り手市場」といわれる中、働く個人として、労働市場と企業の人材マネジメントをどのように読み解くのか。 変化の時代におけるキャリア形成に必要なポイントについて考えます。
変化は突然やってくる
「新卒採用の求人倍率は1.37倍から1.60倍へ」
「転職者数、過去最高の346万人」
新卒採用がバブル期以来の売り手市場となり、20歳代~30歳代前半の転職者数が過去最高となるなど、企業の好業績を反映した労働市場の活性化が取りざたされている。
就活している大学生には、「気づいたら数社から内定をもらっていた」という人が少なくないといわれる。
ほんの数年前の“就職氷河期”がウソのようだ。
「もしかしたら、いま働いている会社でなくても、自分のキャリアを伸ばせる会社が他にあるかも」という意識を持った人には、絶好のチャンスかもしれない。
明らかに潮目は変わっている。
しかし、好景気になったからといって、働く社員のキャリアは安泰になったのか?
たぶん、それは幻想である。
おそらく、これまで以上に個人がキャリア形成をしていくうえでの「変化対応力」が求められているのである。
その前提となる企業の動きをみてみよう。
ここ数年、外資の圧力もありM&Aが活発化され、さまざまな業界での再編が加速している。
A社とB社が合併すれば、必ず余剰人員が発生する。
「希望退職制度」という甘い誘いにより、多少でも増額された退職金を持って意気揚々と次のキャリアを目指す人も多いはずだ。
また、持ち株会社化によるグループ再編などで、親会社の社員だったはずが、出向・転籍により、気づいたら子会社の社員になっていた。という例は後を絶たない。
これまで多くの企業の「キャリア研修」を担当させていただいたが、その背景と目的はさまざまだ。
あるグローバル企業では、情報システム部門と総務、人事、経理部門の業務の一部を自社グループ外の企業にアウトソーシング(BPO)することになった。
業務と人員がセットになって外部化されるわけであり、本社機能に直結した「戦略的な企画業務」を担当する社員以外は、全員が転籍となるのである。(基本的に個別同意が必要)
その部門に在籍しているという理由で転籍の対象となるが、この施策は米国本社の決定で問答無用であり、他の部門に異動したいという要望は原則として聞き入れられない。
働く側とすれば、仕事の内容も職場の座席も変わらないが、ある日突然、社員証(IDカード)が変わるのである。
人事部が転籍先企業と移籍条件を交渉してくれて、1年間はこれまでの処遇が保障されるという。
しかしそれは、1年後以降は何の保証もないということをも意味する。
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増田 崇行
株式会社クエストコンサルティング 代表取締役
2006年5月に株式会社クエストコンサルティングを設立しました。 組織人事領域におけるプロデューサーとして、クリエーターとのコラボレーションによりユニークなサービス、ビジネスを開花させてきました。今後も「Quest for the Human Brightness」をコンセプトとして、インパクトのあるサービスを開発しご提供することで、人と組織の本質的価値の向上に貢献できたらと考えています。