日本最大級の芸能事務所を2つ答えろと問われれば、みんな「吉本興業とジャニーズ」と答えるだろう。どちらも日本のコンテンツ産業の雄である。しかし、同じコンテンツホルダーでも、大きな違いがある。その違いは、今後、さらに大きな差異になっていく予感がする。
原則のぶつかりあいは、時間のムダ。
権利者と運営者の議論を見ていて思うことですが、原則対原則のぶつかりあいを続けていても事態は動かない。特に権利者側の方は、ネットが進化するスピードに置いていかれかねない。だからといって、一権利者として放置していくわけにもいかず、正式にパートナーとなることを選びました。
動画の二次創作者の才能に期待する。
ニコニコ動画については、音楽でいうリミックス的な、コンテンツの有効な二次創作能力に注目しています。こちらから権利フリーの映像を提供し、それを使ってよりおもしろい作品ができあがれば幸いと。権利侵害映像を利用した二次創作物は評価として日の目を見ないので、あえて権利フリーの映像を提供 し、新たな才能の発掘に期待しています。
ファンを一方的に悪者扱いできない。
単に「おもしろかったから、皆にみてもらおうとしてアップロードした」というお笑いファンを一方的に悪者扱いしてよいものかどうかは疑問です。吉本興業は そうしたファンの方に支えられて会社を運営しているわけで、その「皆に広めたい」というパワーをうまく取り込むことができれば、弊社にとっても大きなプラ スとなることは間違いありませんから。
ネットでの勝手な増殖は、コアファンを創る。
「ネットで売れるのはロングテール」。そうしたロングテールコンテンツを購入していただけるのは、本当にお笑いの好きな、コアなファンの方々です。そうしたファン層を増やしていくことが、ビジネスの成否にもつながります。
YouTubeやニコニコ動画は、そうしたコアなファン層を拡大してくれるものと期待している面もあります。もちろん、吉本にも「やりたくてもや れないこと」はある。それでも、できる限りのことをすぐに実行し、ネット配信における権利者のパイオニアを目指していきたいと考えています。
テレビのバラエティ番組の中で、芸人同士が、他人のギャグをパクって笑いをとることがある。また、その姿を見て、他の芸人達が、さらにかぶせて行って笑いをとる。そんな構造をよく見かける。その元のギャグを開発した芸人は、その元ネタになったことを誇りにさえ思う・・・いわゆる「おいしい」状態だ。
吉本興業は、コンテンツホルダーとして、敢えてネットの中に入って、一番「おいしい」状況をビジネスで創ろうとしている。
「見て欲しい」という芸人の心理を上手に活用して、「おもしろかったから、皆にみてもらおう」というネットの向こうの二次制作者の労働力をタダで借りて・・・課金ビジネスにつながるコアなファンの裾野を拡げていく。変に、著作権や版権を主張してその拡大のスピードを遅らせるより、ずっと合理的な考え方だと思う。
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私的マーケティング論
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。