平成20年度版「自殺対策白書」によると、平成19年度の自殺者は、3万3093人。これで、11年連続の、3万人超え。この状況を、「不可視の内戦」のようなものだと言ったのは、作家の辺見庸さんである。見えないところで、日本には、内戦を超える戦いが繰り広げられている。
当然、債務や経済的事情に追い込まれて増える自殺者数を減らさなくてはいけないと思うが、その3万人の巨大な分母となっている「死にたいけど死ねない」人達に目を向けていないと自殺問題の本質を見逃すことになる。
男女の自殺率格差が3倍くらいあることについて「女は家事・育児をする特性がある」「女には母性があるのが当然」など、『女は生命、男は戦争』という論調で、男女の自殺率格差を解説する向きもあるが・・・自殺未遂まで入れると、その実態は、大きく様相を変えることになる。
自殺対策支援センターライフリンクの「日本の自殺の現実」というサイトの表紙には・・・
ひとりの自殺、あるいは自殺未遂に対して、その周囲にいる5~6人以上が深刻な心理的影響を受けると言われています。未遂を含めた自殺者数が年間30万人いるということは、日本では毎年200万人を超える人たちが自殺による深刻な影響を受けていることになります。と明記されている。
自殺を実行し病院に運ばれても原因を自殺だと断定されない場合や、病院まで行くまでもなかった自殺未遂を合わせると、その総数は、自殺者数の約10倍あると予測している。
よって日本では年間・・・
10万人の男性+20万人の女性が、なんらかの形で自殺を謀っているということだ。
経済的な社会的ストレスで増える一方の「死にたくないけど死ななきゃしょーがない」中高年男性の自殺対策は、なんらかの経済対策によって、改善が見込めると考える。健康面の問題でも、医療技術の進化や、カウンセリング等の整備充実は、自殺率を下げるのに、功を奏すると思う。「敵」が明確な自殺には、対処ができる。「希望」の提示によって、自殺を思い留まらせることは可能になる。
しかし、問題なのは、その男性の2倍は居るだろうと思われる「死にたいけど死ねない」女性の方だ。この自殺に対しては、物理的な対策では、何も先が見えてこない。まわりを巻き込んで、もっと増殖していくような気配がある。なぜなら、そこには、明確な、「敵」が存在しないから。病院へ行くほどでもない慢性的な「鬱」状態が、自殺未遂の病理だから。
女性の自殺未遂者の多くが「服薬,四肢切創」を手段に選ぶ。確実に死ねない手段を選ぶということは、それは「生きたい」というシグナルでもある。でも、生きていても「希望」がない。あまりにも「退屈」である。でも「生きたい」メッセージとして、「服薬,四肢切創」を繰り返す。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。