平成20年度版「自殺対策白書」によると、平成19年度の自殺者は、3万3093人。これで、11年連続の、3万人超え。この状況を、「不可視の内戦」のようなものだと言ったのは、作家の辺見庸さんである。見えないところで、日本には、内戦を超える戦いが繰り広げられている。
これを「不可視の内戦」だと評した辺見庸さんは、月刊『現代』8月号(講談社)の中で、次のような指摘をされている。「貧困の原因を個人の努力・工夫不足のせいにする昨今の傾向と同様に、自殺原因の解析でも、国家と社会の病弊を故意に捨象し、個人の心身の病を強引に“真因”としているように思えてならない。希望の見えないこの社会では、戦闘こそないかもしれないが、こころは依然、内戦的緊張にさらされている」と・・・。
この「不可視の内戦」には、公表されない「不可視の数字」がある。
自殺未遂者の実数である。その内容を、公表しているものは少ない。
そこで、「自殺未遂者」の実数を知るための参考となる資料を発見した。目的地域の救急活動記録を元に自殺企図者(自殺未遂者・自殺死亡者)の特徴を分析し,今後の自殺対策に資することを目的とした「大阪府岸和田市における救急活動記録からみた自殺企図者の実態調査」である。
2004年4月から2006年3月までの岸和田市消防本部の1年間の救急活動記録から自殺だと特定できる246例(延べ人数)・196人(実人数)の自殺企図者(自殺未遂者・自殺死亡者)を分析したもので、自殺未遂者の実態を測る材料となる。
その調査では・・・
結果196人の自殺企図者のうち自殺死亡者は52人(男性32人,女性20人)。
自殺未遂者は144人(男性32人,女性112人)。
そのうち2回以上にわたって自殺企図を繰り返した実人数は29人(男性3 人,女性26人)。
全国平均のように男女比2.5対1ではないので、単純にかけ算は、できないとは思うが、自殺者1人がカウントされるに至る背景は、ここから推測できる。
男性は、自殺者数と同等の数のヒトが、自殺未遂者として病院に運ばれている。女性は、自殺者数の約6倍。自殺未遂まで含めた総数を見れば、男性64人に対して女性が132人。
女性が、男性の2倍、自殺という行為に及んでいることがわかる。実際に死に至った自殺者数の男女比とは、逆転の現象が現れているのだ。
「死にたいのに死ねないヒトたち」は、
女性の方が、男性より2倍以上多い。
その女性達の25%は、2回以上の自殺未遂を起こしている。
そして彼女たちは、自殺の手段に、「服薬,四肢切創」等→致死率の高いものを選択しない。
「死にたくないけど死ななきゃしょーがない」中高年男性と、
その倍の数の「死にたいけど死ねない」若い女性がいるのが、
自殺大国・日本の実態なのだ。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。