ありそうでなかったのが公共サービスでのネット活用。法や規制があるため自由競争のメカニズムが働きにくい分野で、あえて勝負を賭けるのがヨセミテだ。旅行者のための画期的なサービスサイト『フォートラベル』を立ち上げ、新たなステップに踏み出す津田全泰社長のビジョンに迫る。
■すべてをオープンに
「初年度からBSはもちろん、PLも公開するつもりです。それこそ真っ赤な決算書をわざわざ公開するなんて、バカじゃないだろうかって思わないでもないですけれど」
ヨセミテ最初のサービスサイト『オンライフ』は、まだ立ち上がったばかり。ユーザー数も微々たるものだ。当然、スポンサーが付くはずもなく、初年度はおそらく売上ゼロに終わるだろう。それでも決算はきちんと公開する。
「もちろん、ずっと赤字でいいと思ってるわけじゃありません。4期目あたりで単年度黒字、7期目ぐらいでは累損を解消するようなJカーブを描く予定です」
とはいえ予想は確定した未来ではない。創業して早くも1年が経とうとしている時点で将来に対する不安はないのだろうか。
「いいサービスを出せば、ユーザーからは必ず協力してもらえると考えています。逆にいえばユーザーからの協力が得られない間は、まだまだ僕たちのサービスが甘いということでしょう」
こうした言葉の端々にも見てとれるのが『自律』の考え方だ。この先業績が上がってくればベンチャーキャピタルなどからの投資やIPOという話が出てくるだろう。そのとき、津田氏はどう対応するのだろうか。
「まずバイアウトは考えていません。僕が一生かけてやりたいことなので、今度ばかりは手離しはしない。IPOについても否定はしませんが、今のところ選択肢には入っていない。経営に自由度を持って長期的な視点でみていかないと、公共サービスでの事業は難しいと思いますから」
にも関わらず、決算資料は公開する。その姿勢には、単に透明性を維持する以上の何かを感じる。そもそも規制が強く、恐らくは既得権益を持った人たちからの反発も予想される領域で、あえてビジネスに挑む理由は何なのか。
「もしかしたら、僕は恩返しをしたいのかもしれません。フォートラベルでバイアウトにこぎつけ、それなりのお金を創業者二人は得ました。もちろん僕らは寝る間も惜しんで、最高のサービスを作り上げた。そのことには自信があります。しかし、あのサイトの価値を創ってくれたのは、投稿してくれたみんなじゃないですか。だから、今度は僕がお返しをする番だって思うのです。もちろんビジネスとしても成立させますよ、きっと」
日本初にして、日本唯一のネット公共サービスを提供するヨセミテは、2018年に1000万人が利用するネット上の公共インフラ構築をめざしている。ヨセミテがこの分野で日本最大の企業になる時、この国は世界一暮らしやすいところになっているはずだ。
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FMO第19弾【株式会社ヨセミテ】
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