犯罪者を刑務所には入れず、街で掃除などをさせる「社会奉仕命令」、刑期の途中で刑務所から釈放して社会の中で更生させる「一部執行猶予」の制度が日本でも導入される模様です。2009年の秋には法案が国会に出るそうですね。
犯罪者を社会の中で更正させる。確かに聞こえはいいのですが、社会になじめない人はどのようなメカニズムで社会とのかかわりを取り戻すのでしょうか?
もしも掃除をすれば、社会とのかかわりがわかるのであれば、どんどん掃除させればいいと思います。
でもそんなことはないですよね。清掃員は社会との関係を作る達人なのでしょうか?以前に書きましたが、メンタルヘルスレベルは高いかもしれませんが、社会との関係という見方をすれば、別に普通の社会人でしょうね。以前の記事はhttp://www.insightnow.jp/article/1841です。
そもそも、社会との関係を切り結ぶと言うのはどういうことなのでしょうか?
普通の人は、社会との関係を切り結ぶ前に家庭で関係を切り結ぶということがあります。
両親、もしくは兄弟との関係が子供にとっては初めて切り結ぶ関係になります。その関係をベースにして、他人と出会い、他人との関係を作っていく。その他人との関係の総体が社会との関係ということになると思います。
つまり、社会に出るというのは、いわゆる他人と関係を1つずつ紡いでいくことです。
他人との関係のベースとなるのは、両親、兄弟などの家族との関係になります。
もし、そこに問題があるならば、社会全般、いわゆる他人達と、関係を作るのは非常に難しいでしょう。
それで、犯罪を犯すというのはどういうことなのか?ここまで言えば、私が何を言わんとしているかはおわかりですね。
犯罪は被害者が必要ですから、他人である被害者がいます。その他人との関係構築が根本間違っているということですね。
全ての犯罪が関係を切り結ぶ能力の欠如によって起こるとは言いませんけどね。
その関係を切り結ぶことに長けていない人々が社会復帰しようと、社会と交流すれば、軋轢を生むことは容易に予想できるのではないでしょうか?
そもそものメカニズムに関する知見がシェアされない中で、特に他人、社会との関係を作り出すことが苦手ではないか?と考えられる人々を社会に放り込むというのは、無理があると思います。
やや大胆に仮説を述べますと、いわゆるヤクザ社会というもので、「親と子」の関係が強調されるのは、擬似家庭を作り出すことによって、そもそも他人、社会との関係構築能力が高くない人々によって構成されるコミュニティに安定性をもたらすためなのかもしれません。
当然ですが、ヤクザ社会は白か黒か?で言えば、スレスレもしくは真っ黒なところで成立しているので、社会復帰の受け皿にはなりえないですね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。