「3年間で30%のコスト削減を実現!」このような新聞記事をよく見かけますが、実際には購買コスト削減が収益にダイレクトにヒットしているかどうかは、非常に曖昧です。 何ででしょうか?
購買改革や購買コスト低減のプロジェクトを行っている時に、よく今年の収益改善に対して「プロジェクト」がどれ位効果につながっているのか?という話題になることがあります。
コスト削減金額の試算方法はいくつかの方法論があり、またあくまでも積上げ上の数値になる場合が多いので、厳密に言うと「コスト削減額=PLの収益改善」となりにくいのが実態です。
そもそも購買業務では品目、カテゴリ、アイテムというカテゴリ分類で業務を推進しますが、PLは勘定科目、費目、細目という分類になりますので、綺麗に試算することが難しいとも言えます。
この差異に関しては大きな理由がいくつか上げられます。
1.コスト削減品目によっては、PLにダイレクトにヒットするわけではなく、減価償却費として数年間で償却されるため。
2.通常コスト削減額は前提となる数量条件×単価の削減額によって試算されるため、購入数量の前提が変わることがままある。
3.コスト削減の試算方法として、新規品の購入に関しては、目標コストや類似品コストからの削減額を試算する場合があるため、理論上コスト削減しているとしても、例えば前期のPLに対して集積インパクトがでてこない。
4.3にも関わるが、購入する(支出する)品目が全く同じ構成比でない場合が多く、構成比の変化を考慮しなければならない。
5.契約上でコスト交渉を行い契約単価は下げたものの、都度発生するような購入で契約単価が適用されず、コスト削減の実現がなされない。
他にも色々なケースが考えられますが、主要な要因をあげますと上記の5点になるでしょう。
今日お話したいのは、5項になります。
製造原価に含まれるような部品・原材料に関しては、アイテム毎にマスター管理がなされていて、自動発注が行われるため、多くの企業では、契約単価の改定=発注単価の改定となります。
但し、工場や事業部毎に同じアイテムを複数のマスター(事業部毎に)で管理していて、同じサプライヤに異なった契約価格で発注が行われるケースは存在します。つまり契約価格をバイヤーの努力で改定したもののコスト削減の成果が刈り取れていないということになります。
一方、直材の世界でも横断的な戦略購買部門がある発注シェアの元に交渉、契約を行い単価決定していたとしても、必ずしも事業部の購買が最安値のサプライヤに発注を行わないようなケースも見られます。
他方、間接材やMROなどの発注管理がシステム化されていない、もしくは契約管理を集中化していない分野については「契約上のコスト削減=コスト削減の実現」につながらないケースは多く発生しています。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。