2004年、世界一多くのビールを集める店としてギネスから認定されたデリリウムカフェ。その記念すべきアジア第一号店は、事業責任者・菅原氏の緻密な戦略と大胆なアクションから生まれた。
Web2.0を飲食業に活かす。いくつかあるデリリウムカフェの成功要因の中でも、このポイントは非常に大きい。極めてリアルな商売である飲食業はWeb2.0とどのように結びついたのだろうか。
そもそもベルギービール時代が、ロングテール時代にぴったりはまるアイテムだった。ビールといえば普通の人は、アサヒにキリン、サントリーならモルツであとはバドワイザーぐらいしか知らない。しかしマニアとなると、まったく事情は別。ベルギービールは実に千種類以上ものアイテムがある。その一つ一つが微妙に異なる味わいを競い合っているわけで、ビール好きにはその種類の多さは汲めどもつきぬ魅力と映る。
これがネットがない時代なら、調べたくとも調べる手段がなかった。ところがインターネットが日本とベルギービールの間に口を開けていた深い断絶をいとも簡単に乗り越えさせてくれるようになった。探せば情報はいくらでも手に入る。情報を手に入れたら、それを実際に飲んでみたいと渇望するのはビール好きなら当たり前の心理というもの。
ここでリアルな店『デリリウムカフェ』が、日本のビールマニアとベルギービールの接点として機能することになる。ベルギービールを飲める店は他にもあるが、通が楽しめる店はデリリウムカフェだけ。なぜなら品揃えに圧倒的な差があるからだ。
品揃えの差を生み出すのは徹底したリアルビジネスの賜物である。つまり菅原氏自らがベルギーまで出かけて、数知れぬほどの醸造所をたずね歩き、そこでオーナーとビールを飲み交わす。心からのビール好き同士の心の交流が、ビジネスのベースをがっちりと固める。
そうした行動を自らのブログで語り、また店に訪れた客とも語らう。その話をコアなファンが思い思いに自分たちのブログに綴る。そのいわばエヴァンジェリストたちのブログがフォロワーを引き寄せる。リアルな店舗とWeb2.0を象徴するような自然発生的なプロモーションの融合が、うまく循環してスパイラルアップしていく。今回のデリリウムカフェの事例が示すのは、これからのビジネス展開における極めて重要なInsightである。
◇インタビュー:竹林篤実/坂口健治 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:村山裕章 ◇撮影協力:㈱オンボード
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第16弾【デリリウムカフェ】
2008.11.11
2008.11.06
2008.10.29
2008.10.21