原材料高に苦しむ100円ショップ業界。100円ぽっきりワンコインという価格の魅力が打ち出しづらくなっているのだ。環境分析の定番フレームワークで今後を読み解いてみたい。
この分析で影響を及ぼす力が強いところがわかったら、まず、その力を弱めて収益を確保することを考えなくてはならない。
業界第2位のキャンドゥは<百円を維持できるコスト競争力のある会社だけと取引をする>と決断したという。つまり、「売り手の交渉力」に対して手を打とうということだ。しかし、<メーカーの選定は取扱商品の減少にもなりかねない>という弱みも抱えることになる。さらに、キャンドゥには弱みがある。記事によれば、直営店の半数は既に100円越えの商品を扱っているとある。
そもそも100円ショップで消費者が物を買う理由、つまりKBF(Key Buying Factor=購買主要因)は「100円という価格で様々な物が変える」という、「価格と品揃え」はどちらも欠かすことのできない要素であるのだ。そのことから考えれば、単価を守り品揃えが減ることも、100円という価格を維持できないことも100円ショップ業界では許されないことなのだ。
5つの力分析によって、どうにも自社を取り巻く力を弱められないことがわかった場合、「業界定義を変える」という決断もある。業界トップのダイソーの動きは、そちらを指向しているようだ。<数年前から新規店を中心に店の看板に百円を付けなくなった>という。
つまり、実質的な100円ショップ業界からの撤退だ。100円ショップ業界ではなく、一般的な「家庭用品・雑貨販売業界」を戦いの場としたということになるのだ。
<「百円越えの商品が増えれば魅力が減るのでは」。消費者の目は厳しい>という記事では消費者の意見を掲載している。価格の特徴を失い、より広い業界で戦うことは本来的にはより厳しさが待っていることになる。しかし、100円ショップ業界にとどまることもジリ貧の未来を暗示している。あえて、その業界を飛び出す決断もあながち間違いだとは言えないだろう。
<業界3位のセリアは店内の内装にもこだわる>とある。店内改装がどのような効果をもたらすかはわからないが、今まで通りでは立ち行かないが故の決断だろう。
100円ショップ業界という業界自体の経済環境の変化という外的要因を前に命脈が尽きようとしているのは明らかだ。業界自体の最後に企業が巻き込まれないためには、企業自体が変わるほかないのだろう。
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2008.12.20
2008.12.28
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。