拠点数日本一、地域密着型VCの独自戦略について 第2回

全国に10カ所、日本最多の地方拠点を持つのがフューチャーベンチャーキャピタル社。京都に本拠地を置く独立系ベンチャーキャピタルだ。後発、小規模ゆえに考え抜かれた同社の戦略展開の秘密に迫る。

▲【京都ベンチャー企業マップ】
京都で創業し、京都で大きくなり、京都に残るのが京都系ベンチャー企業の特長だ。

■差別化の徹底

「競合となるベンチャーキャピタルと、どうやって差別化を図るか。我々が考えたのはターゲットの差別化、他社とは異なる投資先を選ぶことでした」

一口にベンチャー企業といっても、その成長段階によっていくつかのステージに分けられる。創業間もないスタートアップ(創業前の段階をも含む)、組織を立ち上げ事業展開を始めるアーリーステージ、そして何とか事業が回り始めるミドルステージを経て、上場準備に入るのがレイターステージだ。

「我々は投資対象としてアーリーステージまでをメインターゲットにしました。理由は二つあります。リスクの大きいアーリーステージなら競合が減ります。しかも少ない投資で大きなリターンを期待できる。もっともこれは両刃の剣でデメリットも当然あります。たとえば上場にこぎつけるまでに時間がかかること、事業が途中でうまくいかなくなるリスクの高いことなどです」

ハイリスク・ハイリターン型の投資、これがFVCが採った差別化戦略である。手元資金に限りがあるのだから、少額投資でレバレッジを効かせやすいアーリーステージに絞り込む選択は合理的だ。アーリーステージであるほど競合キャピタルが目を付けていない可能性も高い。すなわち少額投資でもリードインベスターのポジションを確保しやすくなる。

「ハイリスクなのだからハイリターンとなる可能性を秘めていることはわかっているけれども、他社はなかなか手を出してこない。それぐらい難しいわけです。未熟なベンチャー企業の支援にはいくつもの難題が待ち構えていますから」

実際ベンチャー企業は基本的に問題だらけといっていい。成長段階に応じて必ず起こる問題はすでにパターン化されているほどで、すべてのベンチャーは決まった時期にほぼ同じような問題に遭遇する。

「まず確実といっていいのが内紛ですね。お恥ずかしい話、当社でも創業後しばらくして起こっています。創業者やオーナーとナンバー2以下の諍いは、ほぼすべてのベンチャー経営者が経験しているのではないでしょうか」

問題はヒト絡みだけではない。カネに関しては資金繰り、モノに関しては販売不振など、およそヒト・モノ・カネに関するあらゆる問題が必ず付いてまわるのがベンチャーの宿命でもある。

アーリーステージに狙いを定めたFVC社は、少しでもリスクを抑え確実にリターンを上げるために独自の手法を採る。その手法が同社独特の地域密着展開へとつながっていった。

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