現代はIT社会。ありとあらゆるデジタル機器にソフトウェアが必ず組み込まれている。プログラムあるところ、必ずバグも存在する。そこで必要不可欠な作業となるのがデバッグだ。日本唯一・デバッグ専業企業として上場を成し遂げたデジタルハーツ社の軌跡を辿る。
「宮澤は作詞の才能を活かして、ゲームの作詞をやる代わりにデバッグの仕事をください、なんてなりふり構わない営業をやっていました」
トップの危機感はそれほどまでに強かったということだろう。しかし、ここで運命の女神はもう一度、デジタルハーツ社に微笑みかけるのだ。
「プロジェクトを管理していた相手先の品質管理部も当然、解散です。すると、そこにいた人たちはみんな、他のゲームメーカーに移るわけです。そして移った先で、我々をパートナーとして呼んでくれました」
期せずして、クライアントが一気に広がったのだ。もちろん、その背景には同社の極めてオリジナリティに富んだデバッグ技術が高く評価されていたことがある。
「一つだけ、我々が胸はって誇れることがあるとしたら、それはたとえどんなささいな業務にも一切手抜きをしなかったことですね」
▼昨日9月1日に移転増床した名古屋営業所のエントランス。
国内では札幌から大阪まで支店を設置、海外事業部も新設された。
デバッグを専業にする。これまで世の中に存在しなかった業態を認めてもらうためには、あらゆる仕事に全力で対応する。そんな企業姿勢が、一度でもデジタルハーツ社と仕事をした相手には十分に伝わっていたのだ。
「おかげさまで契約が切れる前にはプロジェクトの穴を埋めるだけの新規顧客を開拓することができました。その頃からですね、上場を考え始めたのは」
会社が何とか成長軌道に乗った時点で経営陣が考えたのが、自社の社会的な役割だ。デバッグという業種の認知度をいかに高めていくのか。認知度が上がれば、この仕事に携わる若い人たちのモチベーションもきっと高まるだろう。
「安心して働いてもらえる企業として認められること。日本発の新しい業種・業態としてデバッグ専業を何とか認めてもらうこと。こうした課題をクリアする手段として上場に挑みました」
その成果は十分に出ている。いま同社には登録アルバイトも含めて2500人ものスタッフがいる。大好きなゲームを仕事にできる人たちのモチベーションは非常に高い。意気込みの高さがデバッグのクォリティにつながる。まさにポジティブフィードバックが回っているのだ。
「我々日本人の国民性を活かせる仕事としてデバッグは、世界に通じると考えています。だから『Made in JapanからChecked by Japanへ』なんです。我々には、これまで培ってきたノウハウがある。このノウハウが圧倒的に優位なポジションを確保してくれます。今後はデバッグ専業として世界に飛躍していきたいと考えています」
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FMO第14弾【株式会社デジタルハーツ】
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