現代はIT社会。ありとあらゆるデジタル機器にソフトウェアが必ず組み込まれている。プログラムあるところ、必ずバグも存在する。そこで必要不可欠な作業となるのがデバッグだ。日本唯一・デバッグ専業企業として上場を成し遂げたデジタルハーツ社の軌跡を辿る。
第3回
「転機?身の丈をはるかに超えたプロジェクト」
■じゃ御社でやりたいと思います
「相手は知名度、実力ともに世界でもダントツの企業さまです。そんなガリバー企業からどうやって受注するか。この作戦を考えることが最重要課題になりました」
当時のデジタルハーツ社はまだ、起業してわずかに4ヶ月の超・零細企業である。そんなちっぽけな会社が、超・巨大企業に一体どうやってアタックするのか。
「ここでまた幸運に恵まれました。同社の日本法人はゲーム事業部の立ち上げにあたって、いろんなところからたくさん人を集めたわけです。同社にとってもまったく新しい試みなので、社内に人材はいませんから。そのタイミングで新設された事業部に入った人を介して微かな伝手がつながったのです」
まさに天から降りてきた蜘蛛の糸のようにか細くてはるかに長いコネクションを何とかたぐり寄せようと宮澤社長はじめ川口氏、若狭氏は必死で営業をかける。熱意が通じて3ヶ月後には品質管理部トップ、キーマンと面談する機会を得た。
「ものすごく緊張しました。何しろ相手は世界的なコンピュータ・ソフトウェア企業さまですからね。我々の感覚からすれば『めちゃくちゃ巨大な』会議室に通されて、宮澤が20分程かけて会社説明をしたんです。すると先方はしばらくの間だまって考えいました。そしてひと言『じゃ、御社でやりたいと思います』と言ってくれたのです」
▲数年前、某大手企業でのプレゼン用に作られた資料。
この当時すでに「総合デバッグサービス」を全面に打ち出していた。
宮澤氏が行なったのは、会社説明だけである。ほかにいろいろと準備してきたプレゼン資料を見るわけでなく、そもそも質疑応答さえまったくなかったという。
「もっと説明を聞かなくてもいいのですか、とこちらからたずねたほどです。すると、そんなことはいいから、年末までに200人体制を整えてほしいとリクエストされました」
後に親しくなったその品質管理部担当者に、なぜ何も聞かずに取引を決めてくれたのかを川口氏はたずねたことがある。その答は「情熱に賭けたかったから」だったという。担当者はその会社でも社歴が長く、同社ベンチャー時代からの生え抜きだった。だから熱を持って仕事に必死で取り組んでいたころの自分たちの姿を、デジタルハーツを見て思い出したのだと。
「とにかく受注は決まりました。これはすごくうれしい反面、とんでもない課題を抱え込むことにもなります。たった4ヶ月で200人、どうやって集めるんだって。プレゼンからの帰りにファミレスに入って、すぐにミーティングしたことを覚えています」
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第14弾【株式会社デジタルハーツ】
2008.09.22
2008.09.16
2008.09.09
2014.09.01