現代はIT社会。ありとあらゆるデジタル機器にソフトウェアが必ず組み込まれている。プログラムあるところ、必ずバグも存在する。そこで必要不可欠な作業となるのがデバッグだ。日本唯一・デバッグ専業企業として上場を成し遂げたデジタルハーツ社の軌跡を辿る。
■金ない、コネない、知識もない
「ちょうどプレステ2が出る前ぐらいで、ゲームがどんどん増えている時代でした。メディアはCD-ROMからDVDに切り替わり、データ容量も劇的に増えている。デバッグに対する需要は急増していました。ところが、仕事は相変わらずバイト任せで非効率極まりない。これはチャンス、必ずビジネスになると思いました」
デバッグにチャンスありと見た三人は、思いきって会社を興す。いちばん年長者だった宮澤氏を社長に2001年に立ち上げた会社がデジタルハーツ、当初は有限会社でのスタートだった。しかし当時はデバッグといえばバイトでまかなうのが業界の常識である。まさかデバッグ専業でビジネスを展開しようと考える企業など一つもなかった。つまりデジタルハーツが見つけたのはまったくのブルーオーシャンだったのだ。
「会社を始めたときには仲間が6人に増えていました。一人あたり月15万円ぐらいあったら、なんとかご飯が食べられるじゃないですか。ということは会社としては月100万円ぐらいの売上があればいいわけでしょう。こりゃ楽勝だな、なんて気楽なもんでしたね」
ところが、世の中そうは甘くない。資本金こそ社長の宮澤氏が何とかかき集めて来たものの、たったの300万円ぽっきりである。それまで同じようなフリーターだった6人には、これといった人脈もない。
「しかも、揃いも揃ってまともな社会人経験はなし。営業力はゼロどころか常識がない分マイナスですよ。そもそも仕事ってどうやって取ってくるんだとか、見積書ってなんだなんて言い合ってたぐらいですから」
ほとんど会社ごっこのような状態で営業担当となったのは,宮澤氏と川口氏である。テレアポを任された川口氏はとにかく、電話をかけまくった。
「インターネットからゲームメーカーさんのリンク集を拾ってきて、片っ端から電話しまくりました。しかし、悲しいことに営業をしたことなんて生まれてこの方一度もなかったわけです。だから、そもそも最初の一言が何を言っていいかわからないし、だからうまくも言えない。いきなり仕事くださいみたいな感じでは、相手だって何だこいつはと呆れますよね」
実はデジタルハーツ社もブルーオーシャンを切り拓いた企業に共通する悩みを抱えていた。デバッグ専業という企業内容が相手にはまったく理解してもらえないのだ。これまで世の中になかった概念を、人にわかってもらうのはとてつもなく大変な作業である。
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FMO第14弾【株式会社デジタルハーツ】
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