日本経済が急速に冷え込む中、雇用においても厳しさが増しています。こんな時に頼りたがるのが「資格」。資格が就職転職で意味があるのか、またなぜ資格を求めるのかを考えましょう。
複数の大学でセミナー等していますが、先日もある大学の1年生向け特別講義「ワーク・ライフ・バランス」というテーマで3時間の講演をしました。(ね、キャッチーな話題もしゃべれるんですよ、私。プロレスのことしか話せないと思ったでしょ!)
その際に学生から受けた質問で「就職には資格が必要ですか?」というのがありました。まあ学生どころか社会人からすらもよく聞かれる質問です。そういった際、私は必ず問い返すのですが、「『就職』って、どこへの就職についてですか?」と。
そうなのです。「資格」ったって、何百何千もあり、当然玉石混交、サギまがいの民間資格がウヨウヨある中、オールマイティで「就職に利く!」なんて魔法がある訳ないのです。そもそも就職って何ですか。
新卒学生の就職だって、その業界、企業によって選考基準はまちまちなのに、統一した万能資格がある訳ないですよね。
つまりこれまた最近の単純思考が影響しているのです。ビジネス→業界→専門領域→経験・・・・等の、本来の職務経験、能力、適性等無視して、全知全能の存在である資格等無いという事実を知ろうとしない風潮が影響していると言えるでしょう。
よく聞かれる質問で「その企業はブラックですか?」も同様です。逆にブラックじゃない、ってどうやれば証明出来るのでしょうか。
100%安全でないこと=NGなのであれば、そもそも選択の余地がありません。100%も0%もどちらも無いのです。この白と黒だけのデジタル思考が、今の「資格信仰」とも呼べる風潮の土台だと思います。
医者とか弁護士とか公認会計士とかですら、今や勝ち組負け組がある中、素人がちょこっと勉強して取れる程度の資格「だけ」で食っていける訳がありません。
私は新卒大学生、大学院生には「大卒・院卒の資格があれば十分。働いてからしっかり職務経験を積むのが、何よりキャリアとして評価される」と説明します。また社会人の方には「経験の無い資格は基本価値が無い。ご自身の経験を、公的評価として裏付ける資格ならアピールになる」ことをご説明します。
あ、一つだけありました。有利なの。
英語です。TOEICで企業が評価するレベル、最低750。出来れば850以上あれば、一部外資系や国際的業務での「英語力要」という求人に応募が出来るようになります。
英語が出来る、ではなく、単にTOEICのスコアだけの話なので、根本的なビジネスコミュニケーション能力があるという前提でのお話です。「機会増大」という意味において、英語は明らかに効果があるでしょうね。もちろん高給や出世を保証するものでは当然ありません。
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2008.08.14
2008.08.14
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。