前年対比111%、売上高5,855億円。ユニクロが好調を続けている。その目標は2010年に1兆円企業となること。仮にそこまでの売上を達成すれば、ユニクロは完全に頭一つ抜けた企業となる。果たしてその可能性はあるのだろうか。
衣料品小売業とSPAの違い
ユニクロのビジネスモデルはSPAと称される。いわゆる製造小売業である。一般的な衣料品小売業が基本的に自社生産しないのに対して、ユニクロは自社で作った製品を自社の店舗で売る。扱っている商品は違うけれども、サイゼリヤも同じ仕組みだ。
もとより消費者サイドからすれば、仕組みの違いなどどうでもよいこと。スーパーの衣料品売り場も、あるいはデパートのファッションフロアも、ユニクロも消費者にとっては、同じように服を売っている店でしかない。客にとって大切なのは、あくまでも価値/対価のバランスであり、それに尽きる。
ここで少し思い出していただきたいのが、数年前のフリースブームのときに起こった現象だ。注意すべきポイントは、価値/対価バランスを高いレベルで維持し続けるのに有利な仕組みは何なのかということ。
爆発的に売れたユニクロのフリースを見て、スーパー各社もフリースの自社生産に乗り出した。そしてユニクロと同じか、あるいはやや優れたコストパフォーマンスを持つフリースを売り場に並べた。しかし、その後はどうなっただろうか。フリースに次ぐヒット商品が、スーパー各社から何か出ただろうか。
少なくともヒット作といえるほどのアイテムが、スーパー発で出たという話は聞かない。当たり前である。スーパー各社にはユニクロのフリースをまねて作ることはできても、第二、第三のフリースを自社で作り出すほどの開発力はないからだ。
絶え間ないカイゼンを続けるユニクロ
ところがユニクロは違う。ユニクロにはSPAとしての高い企画・開発力がある。その力を象徴する商品がある。「ブラトップ」である。このブラジャーのカップ部分を内蔵したキャミソールは今年、発売目標の300万枚をクリアする見通しだ。この夏の大ヒットともいえる「ブラトップ」はしかし、決して今年ぽっと出で発売された新商品ではない。
「Tシャツを着るときにブラジャーをつけたくない」というニーズに数年前、ユニクロは気がついた。そこでいち早く「ブラトップ」を開発し、商品ラインナップに加えた。その後ユニクロは毎年、ブラトップに寄せられる意見を元に、地道な商品改良を繰り返してきた。そして今年、十分にカイゼンを重ね、その品質に万全の自信を持てるレベルにまで商品をブラッシュアップし、満を持してCMを展開。見事にヒット商品に仕立て上げたのだ。
ここにユニクロのすごみがある。そのすごみは衣料品小売業というビジネスモデルからは決して生まれてこないものである。
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