前年対比111%、売上高5,855億円。ユニクロが好調を続けている。その目標は2010年に1兆円企業となること。仮にそこまでの売上を達成すれば、ユニクロは完全に頭一つ抜けた企業となる。果たしてその可能性はあるのだろうか。
「衣料品小売業という業態は終わったのだと思う」
柳井社長の言葉である(日経MJ新聞2008年8月4日付3面)。筆者はちょうど前日、自分のブログでファミレスというパッケージが終わったのではないかというエントリーを書いたばかりだったので、柳井氏のコメントはまさに目に飛び込んできた。
その『ファミレスの終焉』というエントリーでは、次のようなことを書いた。すなわち、すでにファミレスには当初のターゲットであったファミリー客はおらず、ファミリー客の後ファミレスを支えてきた若者もいない。だからすかいらーくをはじめとするファミレスが凋落傾向にある原因は、ファミレスという業態が日本ではもはや必要とされていないことにある、といった内容である。
では、柳井社長の言葉の真意はどう受け止めればいいのだろうか。ファミレスの場合、結局はいつの間にかファミレスを必要とするユーザーがいなくなっていたわけだ。衣料品小売業も同じように、それを必要とするユーザーがいなくなったと考えればいいのだろうか。
サイゼリヤ、強さの秘密
ここで一つ、ファミレス業界での特異現象について考えてみたい。いわゆるファミレスカテゴリーに入るチェーンの中で、一人気を吐いているサイゼリヤの存在である。あのギャル曽根がサイゼリヤの全メニュー制覇に挑んだとき、しきりにコメントしていたのが、その味の良さだった。基本的に何を食っても「おぃしいぃ?」としかいわない女性のセリフを鵜呑みにするわけにはいかないが、サイゼリヤは少なくともマズくはない。
むしろ、他のファミレスチェーンと比べてかなり格安な価格設定とのバランスも踏まえるなら、そのコストパフォーマンスの高さは際立っている。なぜサイゼリヤは、そこそこの味をキープしながらも競争力の強い価格を打ち出せるのだろうか。その秘密の一つはおそらく、同社独自の食材供給システムにある。同社では野菜は自社栽培し、パスタなどはイタリアからやはり自社大量仕入をしている。これにより流通コストが抑えられ、同時に自社で目利きを行いながらボリュームディスカウントも効かせている。品質/コストバランスが高くなるのは当たり前といえるだろう。
表面的にはファミレスを装いながら、そのビジネスシステムは従来型のファミレスをはるかに超える強靭なメカニズムによって支えられている。これがサイゼリヤなのだと思う。と考えれば、これはユニクロとまったく同じような仕組みではないか。
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