良循環の医療システム(前編)

2008.07.17

経営・マネジメント

良循環の医療システム(前編)

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

元マッキンゼー東京支社長の横山禎徳氏(現社会システム デザイン研究所 ディレクター・社会システムデザイナー)は、 「社会システムをデザインする」 というコンセプトを掲げています。

ここで、「社会システム」とは、端的には

「生活者・消費者への価値提供の仕組み」

と定義されます。

従来の‘産業(業界・業種)別’の縦割りの発想と異なり、

‘産業横断型’

でシステムを設計すべきだと提唱されているのです。

例えば、「金融」というと、これまでは、

銀行、証券、ノンバンク...

といった「金融業」に分類される企業しか念頭に置きません。

しかし、実際の「金融システム」の運用には、

通信、IT、小売業...

など、他の業界の企業が様々な形で参画していますよね。

ですから、

「理想的な金融システム」

を設計するためには、「業界本位」ではなく、

「消費者・生活者の視点」

から業界横串的に一貫性のある形でシステムを見直し、
設計することが必要となってくるというわけです。

さて、横山氏は現行の医療システムの問題点として
一言で言えば、

「自己規律」

が欠如していることを挙げています。

具体的には、

・医療機関は、患者に要求されるがまま、
 腰の引けた過剰医療に陥っており、
 超多忙な毎日で疲労感を蓄積している。

・患者は、医療行為に対する価格感覚がなく、
 過剰診療を要求しがちである。

・現行健康保険制度においては、
 「価格対価値」とあまり関係のない診療報酬が
 支払われてしまう。

といった周知の問題があります。

そして、こうした問題は、
医師・患者間の相互不信の増長や
医師の労働時間の増加といった

「悪循環の医療システム」

を生み出すことにつながっているのです。

では、良循環の理想的な医療システムへと、
システムをデザイン(設計)しなおすには
どうすればいいのでしょうか?

この質問に対する回答として、
横山氏は、次のような方向性を示しています。


・「医師に会う時はすでに患者」という状況を抜け出し、
 医師と患者の対話を促進し、関係性を改善する

・開業医と勤務医のインフォーマルな連携プレーを促進し、
 医療の生産性向上と勤務医の時間の余裕を生み出す。

・「国民医療費」というコスト発想ではなく、
 「国民医療消費」という「価値」の消費へ発想転換する

以上は、言うまでもなく、
日本の医療全体において実現されるべきですが、
1医療機関として、

良循環の「理想的な医療システム」

に限りなく近い医療を実現している病院があります。

それは、東京・築地の聖路加タワーにある歯医者さん、

「馬見塚デンタルクリニック」

です。

後編では、当病院を具体事例としてご紹介します。

*横山禎徳氏の話は、夕学五十講の講演内容に基づいています。

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良循環の医療システム(後編)

松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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