指導要領の改訂で2011年から完全必修化される小学校5・6年生の英語(外国語活動の時間)だが、どういう内容になるのだろうか。先日、文部科学省が作成したテキスト「英語ノート(試作版)」とその指導書を見て、「もしかすると、大変なことになる!」そういう思いがフツフツと沸き起こってきた。
小学校の先生に求められる相応の英会話力
指導要領の改訂で2011年から小学校5・6年生で英語(外国語活動の時間)が週1コマ、完全必修化されるのはご存知だろう。これまでも「総合的な学習の時間」などを使い多くの小学校で英語が教えられてきたが、来年の2009年から前倒し実施がはじまり、2011年にはすべての小学校の教室で本格的に英語が飛び交うようになる。
必修化のために文部科学省が作成したテキストが「英語ノート」で試作版と指導書を見る機会があったので、その印象を述べてみたい。
オーラル中心の「英語ノート」にも驚いたが、その指導書にはもっと驚いた。小学校の先生が、英語の苦手ならば、この指導書を見ても何も出来ないだろうと感じたのだ。
小学校英語は、原則として目標言語だけで指導する教授法、つまりダイレクトメソッドを視野に入れたものになっている。
小学校英語の授業には、外国人の先生(ALT、外国語指導助手)らも加わる予定だが、あくまでも授業を中心になって進めるのは日本語を母国語とする担任の先生で、先生自身にそれ相応の英会話力を求める内容となっていると言っていいだろう。
たとえば、それは「英語ノート」の編集方針にもあらわれている。「英語ノート」は従来の「教科書」とは異なって、テキストに沿って指導をするには、あまりにも簡略化され過ぎているのが特徴だ。
「英語ノート」の中には絵や情報が、点在しているばかりで、体系的な記述は乏しい。これが、現場の先生にとっては大きな難問となるはずだ。なぜなら、先生はテキストに頼り、それを追っていくかたちでの指導が出来ないのだから。
となれば、英会話力や高い知識や技術が必要となるわけだが、そんな英語の授業を、大学以来、あまり英語と接してこなかった先生もいるであろう小学校で、出来るのかどうかは非常に疑わしい。
懸念される小学校と中学校英語の橋渡し
そしてもう一つ。もしこの小学校英語が成功したら、今度は、中学校の英語の授業を全面的に変えない限り、継続性がスムースにいかず、中学校で英語嫌いが大量に生まれる可能性がある。全く異質な授業を小学校と中学校で提供することになるからだ。
小学校では、多分英語は、どの科目に比べても面白くなるだろう(授業が上手くできる先生が多ければ‥)。
その期待値を生徒が持って、中学校の英語に臨んだら、暗記が多く、入試を意識せざるえない中学校の英語では、期待は裏切られることになってしまう。そして、英語嫌いになってしまう生徒もいるはずだ。
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2008.07.10
2008.07.15
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。