今年もやってきた。ペプシ好例の「ビミョーな味のコーラシリーズ」。 その存在理由と、さらに主力商品であるネックスのこだわりを考察してみる。
今までもレッド、ゴールド、カーニバルなどの変わり種を投入してきたペプシ。昨年の夏はキュウリ味の「ペプシ・キューカンバー」がネット上でも大きな話題となった。キュウリ味というインパクトと、実際にそのビミョーな味で話題になったのだ。ちなみに、飲み損ねた方のために解説すると、キュウリ味というより、同じ瓜科の「スイカ」を欲張って白くなった部分まで食べてしまった時のような、うす甘さと少し青臭いような香りが印象的であった。マニア的に「クセになる味」かもしれないが、一般的に「オイシイ!」という味ではなかったはずだ。
さて、今年は「ブルーハワイ」。同名のカクテルより一層鮮やかな青が目にもまぶしく映る。さて、お味は・・・これまたビミョー。
本来の、カクテルであるブルーハワイは、ホワイトラム・2:ブルーキュラソー・1:パイナップルジュース・3:レモンジュース・1の割合でシェイクし、クラッシュド・アイスのグラスに注ぐのが基本。パイナップルの中にレモンの香りを醸し出しつつ、甘みのバランスを取るのがバーテンダーの腕の見せ所ではないだろうか。
で、ペプシのブルーハワイ。・・・甘い。その後、甘みよりも独特の風味というか、ビミョーな苦みが残る。そして肝心のレモンフレーバーが感じられない。何度も飲みたくなるかはこれまたビミョーなのだが、同名のカクテルとのギャップ故か、昨年のキューカンバー以上に一度飲んだら忘れられない味であることは確かだ。
さて、そうした「忘れられないビミョーな味」のコーラをペプシが出し続ける理由は何だろうか。
一言でいうなら、「ペプシはチャレンジャーだから」だ。
強大な敵であるコカ・コーラに対抗するには「徹底した差別化」が基本だ。
マーケットリーダーの戦い方の基本は「同質化」である。例えば、「スポーツドリンク」のカテゴリーにおいて大塚製薬が主力商品である「輸液」の浸透性を元に開発した「ポカリスェット」に対し、日本における飲料最大手のコカ・コーラは、ポジショニングがかぶる同種の商品「アクエリアス」を投入。あっという間にシェアを奪い取った。
規模で劣後するチャレンジャーは、同質化を仕掛けられることに対し、徹底した差別化を図るしかない。常に「自分たちは違うんだ!」と、独自のポジショニングを示し続けるしかないのだ。でなければ、その存在は消し去られてしまう。ましてや、コーラはコークが元祖なのだから。
振り返ってみれば、ペプシの歩みは差別化の歴史であったともいえる。その礎を築いたのは、天才マーケターであるジョン・スカーリー(後のアップルコンピュータCEO)だ。
スカーリーはかつて、全方位的、オールターゲットで展開するコカ・コーラに対して、ベビーブーマー世代に絞ったキャンペーン、「ペプシ・ジェネレーション」を展開。また、その後、日本でも展開された徹底した飲み比べキャンペーンである「ペプシチャレンジ」を仕掛け、大成功を収めたのだ。
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2008.07.01
2008.07.17
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。