化粧品クチコミサイトといえば@cosme(アットコスメ)。月間ページビュー数は2億PVに達し、これまでに集まったクチコミ総数は実に600万近く。寄せられる生の声は1日あたり3,000件を超え、20代~30代をメインに、美容に関心のある女性から圧倒的な支持を集めるモンスターサイトである。今年に入りヤフー、講談社と相次いで業務提携し、新たなステージを目指す同社のこれまでとこれからを聞いた。
■競争優位をいかに維持するか
「我々が秘かに狙っていたのは、全化粧品のデータベースを自分たちで作ってしまうことだったんです。ユーザーによる評価情報までを網羅したデータベースです。だから何より恐れていたのは、流通サイドで同じようなデータベースを作られることでした」
そこで吉松氏が何より急いだのは、マスターデータの作成だった。写真を掲載し、商品スペックを書き込んだページを用意する。それがあって初めてユーザーは目当ての商品を見つけてクチコミを書くことができる。いかに早くマスターデータを整備し、他社が追い付けないレベルに持っていくかが初期のアイスタイル社にとっては決定的に重要な課題だったのだ。
「写真データください、ってメーカーにお願いに行くじゃないですか。ところが『どうして、そんな訳のわからないクチコミサイトのためにデータを提供しなきゃならないんだ』って。『クチコミってどうせ悪口を一杯書き込まれるんだろう、とんでもないよ』ってまともに取り合ってもらえなかったですね」
ある程度予測はしていた状況である。だからメーカーに依頼する一方で、自分たちで化粧品を集めてきては写真を撮り、せっせとサイトにアップする地道な作業も同時並行で進めていた。もちろん、それだけではない。やがて化粧品メーカーから認められるためには、何をすべきかを戦略的に考え、然るべき手も打っていたのだ。
「実はかなり早い段階から広告を出したいといってくださるメーカーさんもいらっしゃったんです。それはもううれしいお話ですよ。何しろ初年度の売上げはたったの90万円しかなかったんですから。でも武士は喰わねど高楊枝って言うじゃないですか。とにかく業界トップ企業と組めるようになるまでは、ほかのメーカーさんの広告は絶対に取らない。それだけは決めていました」
落とすなら業界ナンバーワン、まさにセオリーである。マイクロソフトが日本で『Office』を普及させるためにあらゆる手段を使ってトヨタ、日本生命に食い込んだ戦略としても有名だ。華やかな@cosmeのサイトだけを見ていると見過ごしがちな裏側で、アイスタイル社は極めてロジカルに考え抜かれた戦略を一つずつ進めていた。
とはいえ、同社の本当の狙いは単にクチコミデータベース作りにとどまってはいない。そこからさらに一歩も二歩も突っ込んだ先の世界を吉松氏は描いているのだ。
⇒次回「勝負はこれから」へ続く(全四回)
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FMO第9弾【株式会社アイスタイル】
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