化粧品クチコミサイトといえば@cosme(アットコスメ)。月間ページビュー数は2億PVに達し、これまでに集まったクチコミ総数は実に600万近く。寄せられる生の声は1日あたり3,000件を超え、20代~30代をメインに、美容に関心のある女性から圧倒的な支持を集めるモンスターサイトである。今年に入りヤフー、講談社と相次いで業務提携し、新たなステージを目指す同社のこれまでとこれからを聞いた。
第一回
「エンジェルと禅問答」
■ジェットコースター・バブルに翻弄されて
「いきなり、スーツのジャケットを脱ぐよう言われました。理由が盗聴器を隠してないか調べるからだと。映画?!なんて思いながらも従うしかない。おまけに腕時計も外すように、と。そのお方と話すのに時間を気にしては失礼だからだって」
創業後1年、資金繰りに行き詰まった吉松社長がある投資家に出資を依頼しに出掛けたときの話である。@cosmeを運営するアイスタイル社を吉松氏が創業したのが1999年のこと。時代はまさにネットバブル絶頂期。インターネットあるいはIT関連と言えば、黙っていてもベンチャーキャピタルが勝手に押しかけてくるような時代だった。
「資本金300万円の有限会社でスタートしたんです。それで最初の資本調達が2000年の1月、このときは3000万円調達しました。10倍のバリエーションですね。じゃあもう一回10倍でやれば、3億はいくかもしれないなと。それぐらい集めれば何とかなる、なんて軽く思ってたんですけれどね」
ベンチャーキャピタルが先を争って投資先を探していた時代である。「話は聞きました。2週間待ってもらったら1億円ぐらいは用意できます。任せておいてください」なんて金額の話がまずあいさつ代わりにあって、「で、何をやるんですか?」とビジネスモデルを聞く。でたらめといえばとんでもなくデタラメである。しかし当時のキャピタルの営業マンにとっては、とにかく金を突っ込む先を見つけることが至上命令だったのだ。吉松社長が調達を楽観したのも無理のない話である。ところが急転直下、状況は180度変わる。
「まずアメリカでバブルが弾けたかと思えば、すぐに日本では光ショックが起きた。いけいけベンチャーの旗頭だった光通信の株価が24万円からあっという間に1000円まで落ちました。240分の1ですよ、鬼みたいな流れですよね」
■12時間で引き出した1億円
アイスタイル社は調達予定額を当初3億円に設定していた。この金額を基準に動いていた吉松社長はまたたく間に資金ショートに陥る。
「会社を始めて半年後、7月にはすでに債務超過になってしまいました。7月の給料は半月遅れで何とか都合をつけ、8月分は一ヶ月遅れで間に合いましたけれど、その先はもう見えない。もう必死でキャピタルを回りました。そのとき言われたセリフはおそらく一生忘れないでしょうね」
もともと多くのベンチャーキャピタルは@cosmeの事業モデルを理解していたわけではない。とにかくIT系で見込みがあるかも知れない、というだけの理由で投資先としてリストアップしていたのだ。
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