化粧品クチコミサイトといえば@cosme(アットコスメ)。月間ページビュー数は2億PVに達し、これまでに集まったクチコミ総数は実に600万近く。寄せられる生の声は1日あたり3,000件を超え、20代~30代をメインに、美容に関心のある女性から圧倒的な支持を集めるモンスターサイトである。今年に入りヤフー、講談社と相次いで業務提携し、新たなステージを目指す同社のこれまでとこれからを聞いた。
第三回 「量より質」
■コミュニケーションは大事ではない
「必要のないコミュニケーションは最初から排除していました。これはもう完全に意識的にやっていましたね」
@cosmeのバリューは、どれだけ上質なクチコミが集まるかにかかっている。クチコミをたくさん集めるためには@cosmeのサイトをコアとして、そこでいかにユーザーのコミュニケーションを盛り上げるかがキーファクターになるのではないか。こう問うと吉松氏はあっさりと否定した。
「サイト上でコミュニケーションが起こると場が荒れたり、あるいはその場を仕切ろうとする人が必ず出てくる。それって純粋な商品評価情報にとってはノイズでしかないでしょう。要するにまだその商品を使ったことのないユーザーにとって必要なクチコミは何か、メーカーさんにとって価値のあるクチコミは何か、と突き詰めて行くと、必ずしもコミュニケーションは必要ないんですよ」
徹頭徹尾クチコミをデータと考え、そのデータを価値化(=対価の対象)するというぶれない視点があるからこそ、@cosmeは独自のポジションを確立したのだ。もし@cosmeが他の女性向け情報サイトのようにとにかくトラフィックを集める、そのためにはサイト上でのコミュニケーションを活性化させて、といった戦略に出ていればいまの@cosmeはなかった。
「実はクチコミを増やすことについては、言われるほど苦労していないかもしれません。最初は山田(現:@cosme主宰)が発行していたメルマガ読者向けのクローズドなサイトとしてスタートしました。女性って、化粧品に対して一家言を持っている人が多いんです。書きたくって仕方ない人たちに、書く場所を提供する。それだけで十分だったんですね」
ただし、一つだけ心がけていたことがあるという。これこそが書き込みを続々と誘発する決定的なポイントだから、スタッフもそこにだけはしっかりと手間をかけていたという。
「要するに『たまってる感』が大切なんじゃないかとは思っていました。つまりサイトを見たときに、クチコミがたまってるなあ、と思えるかどうか。人が書いているなら自分も、って思うじゃないですか」
パウダーファンデ、リキッドファンデなど、@cosmeがカバーするアイテムカテゴリーは今でこそ細分化され60ぐらいあるが、最初は「ベースメイク」「スキンケア」など大きく9カテゴリーぐらいに抑えておいて、各カテゴリーごとにクチコミがたまっている感を演出していたのだという。このあたりの戦略性に吉松氏のクールな感覚が垣間見える。
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