2008/5/29、つまり今日、日本で容器で初の立体商標としてコカコーラの瓶が認められました。昔から女の人の裸をかたどった瓶として有名だったものが知的所有権の対象となったということですが、この意味合いはなんなのでしょうか?
コカコーラは2003年に商標として自社の瓶を申請していたそうですが、当時は認められなかったようです。それを不服として訴えを起こしていて、今回、それが認められた。つまり、同じ形の瓶を作ると、コカコーラから訴えられる恐れがあるわけです・・・。
コカコーラの瓶のカタチのお話しはあまりに有名です。今回、コカコーラ側の主張の根拠として、8割の人が瓶の形状を見ただけでコカコーラの瓶だと認知したというものがありました。
驚異的な数字ですよね。ロゴの認知で8割を越えることもなかなか難しいのに、瓶の形状だけで8割の人間が、この商品だと思うなんて状況は、他で何がありえるでしょうか?
同じことが、他のメーカーの瓶に適用されるかで言えば、ちょっと薄い可能性ですよね。
2001年のお話しでちょっと古いですが、ヤクルト社は、指定商品を「乳酸菌飲料」とするヤクルト容器の形状を立体商標として商標登録出願をしました。
しかし、拒絶査定をされ、さらにこれを不服として請求した審判においても、自他商品の識別標識とは認識し得ないと判断されました・・・。
ヤクルトは東京高裁に審決取消訴訟を提起しましたが、棄却されました。
コカコーラの瓶はOKで、ヤクルトのあの小さい容器はダメ・・・。
ちょっとわかりませんが、あのヤクルトの容器を消費者に見せて、何割がヤクルト!と答えるでしょうか?
うーん。感覚的には過半数はヤクルトの容器と判断しそうですが・・・。
そもそも、商標の保護というのは、海賊版の商品が出てきて、不当な権益を得ることを防止するためのものですよね?
中国で「青森」や「京都」が商標登録されているとかいうお話しは明らかに不当なお話しです・・・。
確かに、マーケティングにおいて、「パッケージ」は4Pに加えて5つ目のPだと主張する方もいらっしゃって、バリューを構成する大きな要素の1つではあります。
そこに、非常に大きなコストをかけているケースも多々あります。
今回、コカコーラの容器が立体商標として認められたということは、その大きなコストをかけている部分の知的所有権を保護される可能性がある、パッケージへの投資が見合うものになり、更に成功した場合に、長期的にそれが保護されうるということでしょうか・・・。
もしも、もしもですが、スターバックスのあの容器が立体商標になってしまったら、他のコーヒー屋さんはとっても困るでしょうね・・・。しかし、知らないでやっていればOKというお話しになりがちなので、いいアイデアが出たら、より素早く真似しにいくというアクションが、より利得を高めることにもなるでしょうか・・・。
知財系のプロジェクトをやっていたことがありますが、どっちが先に開発しようとしていたかを証明するなんて、なかなかできないですよね。真似したことを証明するなんて無理です。
その間に、利得が得られればそれでいいというスタンスで仕掛けてくるようなやや山師的な会社にはある意味で勝てません。
ただ、良識ある大きな会社が競合である場合に、似たようなパッケージ開発への投資意欲を削ぐという効果はあるかもしれません。今後は、一応容器の商標も出願しておくという作業が、大きな会社では増えることになりそうですね・・・。
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2008.12.20
2009.01.24
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。