化粧品クチコミサイトといえば@cosme(アットコスメ)。月間ページビュー数は2億PVに達し、これまでに集まったクチコミ総数は実に600万近く。寄せられる生の声は1日あたり3,000件を超え、20代~30代をメインに、美容に関心のある女性から圧倒的な支持を集めるモンスターサイトである。今年に入りヤフー、講談社と相次いで業務提携し、新たなステージを目指す同社のこれまでとこれからを聞いた。
「『こないだは土砂降りの中でずっと土下座してた社長がいたぞ』とか、『まず腎臓売って来いよ、話はそれから聞くよ』みたいなことを言われ、手のひら返すってこういうことなんだって思い知りました」
八方ふさがりに追いつめられた吉松氏の前にわずかに一本、救いの手が差し伸べられた。コンサル時代の友人がある投資家に話をつないでくれたのだ。ここで話は冒頭のシーンに戻る。
「ボディーチェックをされて案内されたのが、銀行の金庫室みたいな丸い金属製のドアの前でした。いかにも重そうなレバーを回してギィーッって開いた先には真っ赤な絨毯が敷いてある。その先に一人、初老の紳士が座っていたんです」
そこから始まったのが延々と続く禅問答である。「お前ら夫婦か」「はい」で沈黙。「化粧品か」「はい」でまた沈黙。
「話が全く進まない。それで20分ぐらい経つと小休止で表のドアを開けて空気を入れ替えるんです。外に音が一切漏れないように完全密閉された部屋だから、20分で酸素がなくなるんだと言われて、ここは一体どこの国だろうって」
空気替えが済むと、また禅問答が始まる。「ネットって何やるんだ。インターネットか」「はい」といった調子の問答がどれぐらい続いたのか。いつしか吉松氏は時間の感覚を失っていったという。
「もう他に残された道はない。徐々に現実感をなくしていってたというのが正直なところかもしれません」
そして、実は12時間が経とうとしていたその時。
「で、『いくら必要なんだ』って。これもいきなりな質問ですよね。急に我に返って1億ですって答えたら『わかった』って。何がわかったんだろうとぼんやり考えていたら、お盆に紙が載って出てきた。小切手でした」
嘘みたいな話で資金繰りの危機は脱出できた。しかし、そもそも@cosmeはクチコミサイトである。なぜ、そこまでの資金が必要だったのだろうか? 実は、このイニシャルコストの多さにこそ@cosme成功の秘密が隠されているのだ。
▲インタビュー風景(左から竹林氏、坂口、吉松氏)
⇒次回「クチコミはデータベース」へ続く(全四回)
『株式会社アイスタイル関連リンク』
・株式会社アイスタイル
http://www.istyle.co.jp/
・みんなのクチコミサイト@cosme
http://www.cosme.net/
・みんなのクチコミサイト@cosmeの姉妹版 化粧品ショッピングサイト cosme.com(コスメ・コム)
http://www.cosme.com/top/index.html
・化粧品レビュー情報(クチコミデータ)を閲覧・集計できる有料データサービス @cosme PRO
http://www.cosmepro.jp/asp/gw/011_01.asp
(インタビュー:竹林篤実/坂口健治 構成:竹林篤実)
【INSIGHT NOW!の新特集企画:F.M.Oについて】
特集の切り口となるF.M.OすなわちFirst、Most、OnlyとはM&C研究所・弘中勝氏が創出されたコンセプト:F.M.Oのいずれかを実現できれば強力な差別化につながります。
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FMO第9弾【株式会社アイスタイル】
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