北の都・札幌は冬場、どか雪に悩まされる。降り積もった雪を溶かす融雪装置だが、従来のものはムダの多さが欠点だった。「何とかムダをなくし、環境ダメージを抑えられないか」。エコで北海道を良くしたいと願う若手社長の熱い思いが生んだ画期的な装置が『ゆりもっと』だ。
最終回
「すご腕セールスマンとの出会い」
■この製品を、俺に売らせろ
「メチャクチャ期待は大きかったんですけれどね。実は4月に発売して以来の半年間で、たったの10台しか売れなかったんです」
入澤社長がまさに、満を持して発表した『ゆりもっと』は残念ながら、発売後の6ヶ月間はまったくの鳴かず飛ばず状態となった。これこそが正真正銘、日本初の画期的な製品の宿命でもある。つまり、今まで誰も見たことも考えさえもしたことのないような製品であるがために、そのメリットはもとより、そもそもそれがどんな製品なのかをなかなかわかってもらえないのだ。
「しかも燃料費が安くなります、といっても、じゃあどれぐらい安くなるんだと問われれば答えられない。何しろデータがまだないわけですから。だからといって適当な嘘を言うわけにもいきませんしね」
マンションの管理会社、設計事務所と飛び込みで営業をかけてはみるもののまったく手応えなし。会社を設立した2月からずっと赤字垂れ流し状態である。このままでは年を越せないかもしれない。そんな悪夢が現実味を帯びてきた頃、入澤社長はそれまでじっとタイミングを諮っていた最後の手段に打って出る。プレスリリースと展示会への出展である。
まずプレスリリースが功を奏した。リリースを読んで『ゆりもっと』の革新性を見抜いた日経の記者が、記事に取り上げてくれたのだ。すると新聞に載ったまさにその日のうちに、ある人物が入澤社長の元を訪れる。いまエコモット社で営業部長を務める大石氏である。
「新聞を持って事務所にいきなりやってきたかと思えば、第一声が『これを俺に売らせろ!』ですよ。ビックリしたのなんのって。でもよくよく話を聞いてみると『ゆりもっと』こそ大石がマンションオーナーから相談を受けていた悩みを、まさにドンピシャで解消する商品だったわけです」
半信半疑、大石氏にセールスを任せた途端、あり得ないことが起こる。入澤氏が半年間、市内をかけずり回って10台しか売れなかった『ゆりもっと』が、11月から3月までで100台近く売れたのだ。
「展示会に出したら、地元ではいちばんの北海道新聞の一面にでかでかと掲載されるわ、それを見たどこかの業者がたちまち真似した製品を発表するわと、いきなりてんやわんや状態になってしまいました」
■MCPCアワード受賞で政府のお墨付きを得る
「開発にあたって携帯のキャリアではKDDIさんに全面的にサポートしてもらいました。北海道のエリカカバー率はKDDIさんがナンバーワンだったからです。そこで担当の方が、これはぜひ応募しましょう、いや絶対にすべきです、なんて強く奨めてくれたのがMCPC award 2008でした」
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FMO第8弾【エコモット株式会社】
2008.05.20
2008.05.13
2008.05.07
2008.04.28