/どうせ出来はたいしたことはないが、どのみち凡百のスタッフと大差ないし、そもそもクライアントも、そんなケタ外れのものなんか望んでいない。だが、重要なのは、AIの能力ではない。それが、昨今、ばかみたいに膨れ上がった社内のむだな人間関係コストを、どれだけ一気に削減してくれるか、だ。
たとえば、デザイン会社。クライアントを訪問する前に、いくつかカンプ(叩き台)を持って行かなければならない。そのアイディアを社内のスタッフたちに出させる。複数業者競合の大手大型コンペならともかく、一般のクライアントなんか、さして特別なものなど臨んでいない。だから、困る。クライアントがどんなものを「ふつう」と考えているか、逆にいろいろなもの知りすぎているデザイン会社の方がわからない。それで、まあ、こんなのかな、というところを、とりあえずスタッフたちが人海戦術であれこれ作る。それがカンプ。
打ち合わせに持っていって、クライアントが、これ、というものを、即座に決めてくれれば話は早い。が、クライアントは、しょせんシロウトだ。あれはどう、これはどう、と、たいてい迷う。ただ、その反応を見て、営業は話を持ち帰り、カンプのいくつかを手直し。そして、また来訪。
厄介なのは、自分のアイディアに、やたらムダな思い入れのあるスタッフだ。営業につっかかる。どうして、これがダメなんですか、これのここが一押しなのを、ちゃんとクライアントに説明してくれましたか、と。それでも、まあ、いやいやながらでも、仕事は仕事だから、クライアントの言うとおりに直すだろう。ところが、その作り直しに、クライアントがちまちまとしたコメントをつけるものだから、また差し戻し。そうなると、え、なんで最初に言ってくれなかったんですか、もっとちゃんと要望を聞いてきてくださいよ、と、ぶーたれる。それを上司がなだめて、とりあえず仕事を進める。
ところが、いったん決定稿になった後になっても、あれこれ先方の上司だの、その奥様だのなんだのから横ヤリが入って、字を大きくしろ、小さくしろ、みたいな、どうでも良さそうな変更で、全体のレイアウトがガタガタになっていく。おまけに印刷所の入稿のケツかっちんも迫り、これまた人海戦術の徹夜で根本から修正。
デザイン会社に限らず、住宅メーカーでも、工事や部品の下請でも、どこでも仕事は似たようなもの。ここで最大の問題は、スタッフに対する人間関係の調整コストだ。中間管理職の仕事なんて、チームをまとめて一丸となって、というと聞こえがいいが、実際は、部下たちの御機嫌取りだ。とにかく、難関と障害、変更だらけでも、ぶーたれさせずに、やる気にさせないといけない。そのために、スタッフたちみんなの顔色を伺いながら、相手の心象を害さないように、褒めて、おだてて、乗せて、どうにかとりあえず仕事をやり遂げてもらわないといけない。
昔のように、仕事だろ、ごちゃごちゃ抜かすな、なんて言おうモノなら、すぐ辞めてしまう。それどころか、パワハラ騒ぎで、管理職の方の首が飛ぶ。おまけに、ブラック会社だなんだ、と、ネットに暴露して騒がれ、会社ごと火だるま。さらには、仕事にあぶれた弁護士みたいなのまで絡んできて、スラップ訴訟で脅され、ただでさえ忙しいのに、延々と示談交渉に引きずり込まれる。
そこで、AIだ。こういう問題を、根本からすっきり解決。カンプなんか作るていどの仕事のために、税金だの、福利厚生費だの、バカみたいに高い人件費や人材募集費をかけるくらいなら、ありものの外注AIの方がはるかに安い。カネさえ払えば、文句も言わず、いくらでも即座に作り直しに応じてくれる。残業代もへったくれもない。もちろん差し入れなんか不要。どうせ出来はたいしたことはないが、どのみち凡百のスタッフと大差ないし、そもそもクライアントも、そんなケタ外れのものなんか望んでいない。
もちろん最終稿は、これまでどおり責任者が自分でチェックして手を入れないと、AIも、人間のスタッフ同様、どこでアイディアや素材をパクっているか、はなはだあやしい。それでも、スタッフたちはもちろん、わざわざ会社に行って、たいした経験も実績もないのに態度ばかりでかい若造の部下たちに、へらへら御機嫌取りをするだけの、むだに高給取りの中間管理職もいらなくなる。会社のオーナーが、たいていのことはひとりでできるし、その方がはるかに仕事も早く、会議だの、相談だの、飲み会だの、社内の人間関係にむだな時間を取られずに済む。
重要なのは、AIの能力の高さではない。それが、昨今、ばかみたいに膨れ上がった社内のむだな人間関係コストを、どれだけ一気に削減してくれるか、だ。
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。
経営
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
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