6️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第6章】

2026.08.05

組織・人材

6️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第6章】

富士 翔大郎
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

教育担当者の仕事とは何か 「教育担当者の仕事は何ですか。」 30年以上この仕事に携わってきたが、この問いほど答えるのが難しい質問はない。 研修を企画する人。 講師を手配する人。 教材を作る人。 年間計画を立てる人。 どれも間違いではない。 しかし、どれも本質ではない。

【連載】人を育てるという仕事

― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―

第6章

教育担当者の仕事とは何か


「教育担当者の仕事は何ですか。」

30年以上この仕事に携わってきたが、この問いほど答えるのが難しい質問はない。

研修を企画する人。

講師を手配する人。

教材を作る人。

年間計画を立てる人。

どれも間違いではない。

しかし、どれも本質ではない。

私がたどり着いた答えは、もっとシンプルだった。

教育担当者とは、人が育つ環境をつくる人である。



教育担当になった当初、私も研修を「提供すること」が仕事だと思っていた。

年間スケジュールを作る。

対象者を決める。

講師と打ち合わせをする。

会場を準備する。

無事に研修を終える。

教育担当者として必要な仕事であることに変わりはない。

しかし、それを何年も続けるうちに気付いた。

研修を実施しただけでは、人は育たない。

研修は、あくまでも成長のきっかけにすぎない。

本当の成長は、その後の職場で始まる。

だから教育担当者は、研修だけを見ていてはいけない。

職場を見なければならない。



私は、教育担当者の仕事は「教育部門」の中だけでは完結しないと思っていた。

現場へ行く。

管理職と話す。

若手社員の声を聞く。

時には経営層とも議論する。

人材育成は、人事部門だけの仕事ではない。

会社全体で取り組むテーマである。

その中心で、人と人をつなぐ役割を担うのが教育担当者だと考えていた。



教育担当者には、専門知識も必要である。

教育工学。

成人学習。

研修設計。

ファシリテーション。

評価手法。

どれも重要な知識だ。

しかし、それ以上に必要なものがある。

現場への関心である。

現場を知らずして、人は育てられない。

どんな仕事をしているのか。

何に困っているのか。

どんな未来を目指しているのか。

そこを理解しようとする姿勢がなければ、教育は机上の空論になってしまう。



私は教育担当者を「サービス提供者」と考えたことはない。

現場から依頼された研修を実施するだけなら、それはサービス業である。

しかし、人材育成はそれだけではない。

現場自身も気付いていない課題を見つける。

将来必要になる能力を先回りして考える。

組織の変化を見据えて、新しい学びを提案する。

教育担当者には、そんな役割もある。

言い換えれば、

教育担当者は、組織の未来を設計する仕事なのである。



2014年に取材を受けた頃、私はよく「教育部門は社内のコンサルタントである」と話していた。

研修を売るのではない。

課題を一緒に考える。

解決策を一緒に設計する。

そして成果を一緒に確認する。

その繰り返しだった。

だから現場との信頼関係が何より大切だった。

教育担当者は、教える人ではない。

伴走する人なのである。



2026年の今、人材育成を取り巻く環境はさらに大きく変わっている。

生成AIが学習を支援し、個別最適化された教育も現実になりつつある。

これから教材を作る仕事は減っていくだろう。

事務作業も効率化されるだろう。

では、教育担当者の役割は小さくなるのだろうか。

私は、むしろ逆だと思っている。

AIができることが増えるほど、人にしかできない仕事の価値は高まる。

現場の声を聞くこと。

人の可能性を信じること。

組織の未来を描くこと。

学び続ける文化をつくること。

それはAIにはできない。

だから教育担当者という仕事は、これからますます重要になると私は考えている。



30年以上この仕事に携わってきて、今、教育担当者とは何かと聞かれたら、私はこう答える。

教育担当者とは、人を育てる人ではない。

人が育つ環境をつくり続ける人である。

研修は、そのための手段の一つにすぎない。

だから私は今でも、教育担当者という仕事に大きな誇りを持っている。

人の成長に関われる仕事は、決して多くはない。

その仕事を選び、続けてこられたことを、私は幸せだったと思っている。



次章予告

第7章では、この連載の中でも最も誤解されやすく、そして私が最も大切にしてきた考え方についてお話しします。

タイトルは、

「OJTが回れば研修はいらない」の真意。

この言葉の本当の意味を、30年以上の実践を振り返りながらお伝えします。

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富士 翔大郎

人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民

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