4️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第4章】

2026.08.01

組織・人材

4️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第4章】

富士 翔大郎
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

【連載】人を育てるという仕事 ― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ― 第4章 研修を設計するという仕事 教育担当になって間もない頃、私は一つの疑問を持っていた。

【連載】人を育てるという仕事

― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―

第4章

研修を設計するという仕事


教育担当になって間もない頃、私は一つの疑問を持っていた。

「なぜ、これほど良い研修なのに成果が出ないのだろう。」

講師の評判はいい。

教材も充実している。

受講者のアンケートも高評価。

それでも現場は変わらない。

この違和感が、私の考え方を大きく変えるきっかけになった。

私はある時から、「研修を作る」という言葉を意識して使わなくなった。


代わりに使うようになった言葉がある。

**「研修を設計する」**である。

この二つは似ているようで、実はまったく違う。

「作る」は研修当日がゴールになる。

しかし「設計する」は、研修が終わった後まで考える。

受講者は、どんな状態で研修に参加するのか。

研修中に何を感じるのか。

職場へ戻った翌日、どんな行動を起こすのか。

その行動を上司はどう支援するのか。

数か月後、どのような成果につながるのか。

そこまで描いて初めて、私は「研修を設計した」と言えるのだと思っていた。



2014年の『人材教育』の記事でも、研修開発のプロセスについて紹介していただいた。

しかし実際には、それは単なる研修開発ではなかった。

一つのプロジェクトだったのである。

まず現場の課題を把握する。

必要な能力を整理する。

対象者を明確にする。

ゴールを決める。

プログラムを設計する。

講師と何度も打ち合わせを重ねる。

教材を改善する。

研修を実施する。

受講者の反応を確認する。

職場での変化を追いかける。

改善点を次回へ反映する。

この流れを何度も繰り返していた。

だから私にとって研修とは、一日限りのイベントではなかった。

改善し続けるプロジェクトだったのである。



研修には「正解」がない。

同じプログラムでも、受講者が変われば反応は変わる。

時代が変われば課題も変わる。

だから私は、「完成した研修」という言葉を使わなかった。

毎回改善する。

毎回見直す。

毎回現場へ戻る。

その積み重ねだけが、教育の品質を高めていく。

教育担当者の仕事は、研修を実施することではない。

研修を進化させ続けることだと考えていた。



もう一つ、大切にしていたことがある。

それは、講師との関係だった。

私は講師を「依頼する相手」と考えたことはない。

一緒に教育を創る仲間だと思っていた。

だから打ち合わせにも時間をかけた。

現場では何が起きているのか。

受講者は何に悩んでいるのか。

この研修で一番伝えたいことは何か。

それらを共有しなければ、本当に現場に届く研修にはならない。

講師の経験と、教育担当者が持つ現場情報。

その二つが重なった時、初めて価値ある研修が生まれる。

私はそう信じていた。



設計という言葉には、もう一つ意味がある。

それは、「研修だけを設計しない」ということである。

受講前に上司へ何を伝えるか。

研修後にどんなフォローを行うか。

現場で実践する機会をどう作るか。

評価をどう行うか。

こうした一連の流れがつながって初めて、人は成長する。

研修当日の六時間だけを設計しても、人材育成は完成しない。

だから私は、教育全体を一つの仕組みとして考えていた。



2026年の今、生成AIによって教材づくりは驚くほど効率化された。

研修資料も短時間で作れる。

ケーススタディも作れる。

演習問題も自動生成できる。

しかし、それだけでは教育にはならない。

何を学ぶのか。

なぜ学ぶのか。

学んだことを、どう現場につなげるのか。

ここは、今も教育担当者が設計しなければならない。

AIは教材を作ることはできても、人の成長を設計することはできない。

そこに、人材育成という仕事の価値がある。



私は30年以上、人材育成に携わってきた。

振り返ると、作っていたのは研修ではなかった。

人が成長する「きっかけ」と「仕組み」を設計していたのだと思う。

だから今でも、教育担当者という仕事は「企画職」ではなく、

未来を設計する仕事だと考えている。



次章予告

第5章では、『人材教育』でも紹介された「教育品質」をテーマに、研修の品質をどのように高め、どのように改善し続けたのかをお話しします。

教育は一度作れば終わりではありません。品質を磨き続けることこそ、教育担当者に求められる重要な役割でした。

Ads by Google

富士 翔大郎

人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民

フォロー フォローして富士 翔大郎の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。