金融資産を増やせば、人生は豊かになるのか ――新NISA時代に考える「自分投資会社」という生き方

2026.08.11

組織・人材

金融資産を増やせば、人生は豊かになるのか ――新NISA時代に考える「自分投資会社」という生き方

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

給与が上がったはずなのに、生活が楽になった実感はない。 給与明細を開けば、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税が差し引かれている。そこに食料品、光熱費、住宅費をはじめとする物価上昇が重なり、以前と同じように暮らしているだけでも、家計の余裕は失われていく。

日本の家計金融資産は、長く現金や預金に偏ってきた。日本銀行の比較資料でも、日本の家計は米国やユーロ圏と比べ、金融資産に占める現金・預金の割合が高いことが示されている。

預金には、重要な役割がある。

日々の生活費。

突然の病気や失業に備える生活防衛資金。

数年以内に使う予定のお金。

こうした資金まで、値動きのある投資商品に回す必要はない。

一方で、物価が継続的に上昇する環境では、預金残高が減っていなくても、そのお金で買えるモノやサービスが減っていくことがある。

だから、預金か投資かという単純な二者択一ではなく、自分の目的や期間、リスク許容度に応じて、お金の置き場所を考えなければならない。

この意味で、新NISAは有益な制度である。

しかし、新NISAが示している変化は、金融商品の選択だけではない。

その背後にあるのは、

「自分の将来は、自分でも経営してください」

という社会からのメッセージである。

会社が給与を払う。

国が年金や医療を支える。

銀行に預金しておけば資産は守られる。

そうした従来の人生モデルだけでは、将来を十分に描きにくくなった。

これからは、働くだけでなく、収入と支出を管理する。

貯蓄するだけでなく、お金の価値を守り育てる。

会社で与えられた仕事をこなすだけでなく、自分の能力を更新する。

定年まで雇われることを前提にせず、その後も生きられる力を育てる。

一人ひとりが、自分の人生を一つの経営体として考えることを求められている。

そこで必要になるのが、自分投資会社(私個人の定義)という考え方である。

自分投資会社とは何か

自分投資会社とは、文字どおり、一人ひとりが自分という会社を経営するという考え方である。

ただし、その目的は、自分を市場で最も高く売ることではない。

年収を最大化することでもない。

金融資産だけを増やすことでもない。

誰でもない自分自身の中にある価値を発見し、育て、他者や社会に生かしながら、自分にとっての豊かな人生を再創造する。

それが、自分投資会社の存在目的である。

人間は、一人ひとり違っている。

育った環境も違う。

経験した喜びや挫折も違う。

物事の感じ方も、考え方も、人との関わり方も違う。

得意なことも、苦手なことも違う。

本来、その違いにこそ価値がある。

ところが、現代社会では、限られた基準によって人間が評価される。

学歴。

年収。

役職。

処理速度。

生産性。

発信力。

論理性。

コミュニケーション能力。

リーダーシップ。

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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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