2026.06.05
学ばない国の未来 若手の能力を失わせているのは、若手自身なのか
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
日本の未来を考えるとき、私たちはよく「若手が弱い」「最近の若者は挑戦しない」「主体性がない」と語る。 しかし、本当にそうなのだろうか。 データを見ると、別の現実が見えてくる。 OECDの成人スキル調査では、日本の16〜24歳は、読解力・数的思考力・適応的問題解決力のいずれもOECD平均を上回っている。つまり、日本の若手は、世界と比べて基礎能力が低いわけではない。むしろ、素材としては十分に高い能力を持って社会に出ている。
ここに、人口減少が重なる。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、日本の総人口は2020年の1億2615万人から、2070年には8700万人へ減少すると推計されている。65歳以上人口の割合は、2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇する。
つまり、日本はこれから、人が減る。
若手も減る。
働く世代も減る。
高齢化は進む。
本来であれば、このような国こそ、一人ひとりの人材価値を徹底的に高めなければならない。少ない人数で、より高い価値を生み出すためには、学び続ける社会人、育てられる上司、成長するチームが不可欠である。
しかし、現実は逆に見える。
人は減る。
だが、人を育てる力も弱い。
生産性は低い。
社会人は学ばない。
若手は辞める。
職場のエンゲージメントも低い。
Gallupの日本データでは、日本で仕事にエンゲージしている従業員は8%にとどまる。東アジア平均18%、世界平均20%を大きく下回っている。
これは、「やる気のない人が多い」という単純な話ではない。
仕事が、人にとって成長の場になっていないということだ。
人は、自分が大切にされていると感じ、成長できると感じ、仲間と価値を生み出せると感じるとき、仕事に本気になる。
逆に、学べない、任されない、挑戦できない、意見を出しても変わらない、上司が学んでいない、仕事の意味が見えないという職場では、本気になる理由が失われる。
ここで、日本の未来は二つに分かれる。
一つは、学ばない国のまま沈んでいく未来である。
この未来では、企業は採用にばかり力を入れる。しかし、入社後の育成構造は変えない。若手が辞めると「最近の若者は我慢が足りない」と言う。上司は学ばないまま、昔の成功体験で部下を管理する。会議は報告と進捗確認に終わり、失敗は学びではなく減点材料になる。若手は、挑戦するより黙っていた方が安全だと学習する。
その結果、会社は表面上は動き続ける。
しかし内側では、人が育たない。
知恵が更新されない。
若手が定着しない。
中堅が管理職になりたがらない。
ベテランの経験だけに依存する。
AIを導入しても、使い方は業務効率化止まりになる。
これは、突然沈む未来ではない。
もっと怖い。
動いているように見えながら、少しずつ沈んでいく未来である。
もう一つは、成長を組織文化にした企業だけが生き残る未来である。
この未来では、会社は人を作業者として見ない。人を、成長する存在として見る。若手に小さな成功体験を積ませる。上司自身が学び続ける。会議を報告会ではなく、学び合いと相互支援の場に変える。失敗を責める材料ではなく、次の行動を変える材料にする。AIを単なる効率化の道具ではなく、人間の創造性を拡張する道具として使う。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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