2026.03.16
今、経営者は何をすべきか(3) 経営とは人が価値を生み出す営み 企業価値をバリューアップする「セールスイネーブルメント」
村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
外部環境が変わり、内部環境の課題が明らかになったとしても、最後に問われるのは「組織は実際に動けるのか」という一点です。どれほど優れた戦略も、実行されなければただの理論に過ぎません。 経営者には、変革を「実行できる組織」をつくる責任があります。経営者の仕事とは、組織全体に「勝つために変わる」というマインドを根づかせること。そして、それを実装する具体的な仕組み、私はこの仕組みづくりを「セールスイネーブルメント」と呼んでいます。
1年後は、経営者自身が体を鍛えて、経営層が「気づいたら仕事しかしていない1年だった」と言えるほど、仕事に没頭する1年を過ごす。そして、若手の執行役員を思い切って取締役に抜擢し、その若い取締役が年上の執行役員や営業を束ねていく。勇気を持ってそんな経験をさせることが、令和型のセールスイネーブルメントが成功する道になると私は思っています。
変革を進めるためには、異なる価値観や経験を持つ若い人材を積極的に登用することが不可欠です。私は最近、上場企業の役員を海外にお連れする機会が増えていますが、外部の人材や海外の若手と組むほうが、意思決定のスピードも発想の柔軟性も格段に高く、組織が大きく刺激を受けます。中国では、28歳で2,000人規模の組織を率いる若手執行役員が珍しくありません。英語も堪能で、プレゼンテーションの質も高く、こちらが勉強になるほど優秀な人材が次々と育っています。
日本は年功序列で慮る文化が強く、高齢者が8割喋り、若者は2割しか喋れないような組織ではセールスイネーブルメントは実行しづらく、改革が遅れてしまいます。そこで信賞必罰を徹底し、一番頑張った人がポストにつくフェアなルールにすれば、若い人が自然と上がってきます。人材は玉石混淆ですから、入れ替え戦が起きるような制度に設計し直す必要があります。どんな組織でも本当に優秀な人材は一握りです。かつては8:2の法則と言われましたが、今は9.5:0.5と言っていいくらいの感覚があります。この0.5にいる若い人材を早い段階でポストに付けなければ、能力を発揮する前に埋もれてしまいます。だからこそ優秀な若手にはミッションとリソースを与えて、権限委譲をしていかなければなりません。経営者がこのエンパワーメントの覚悟を持てるかどうかが、組織変革の成否を決めます。
無形資産の時代に求められる「人」を中心に据える経営
私は、経営とは人が価値を生み出す営みだと思っています。変革の時代に選ばれるのは、人が最大限に力を発揮できる組織であり、それをつくる覚悟を持つ経営者です。人的資本経営の目的は「企業価値のバリューアップ」にあるというのが、私の持論です。ただし、それは従来型の企業価値ではなく、これからの時代に求められる無形資産を基盤とした企業価値のバリューアップです。
私は、これからの組織は人を縛るためのものではなく、人の自己実現を支えるプラットフォームであるべきだと考えています。組織に貢献させるために人を選ぶのではなく、一緒に働くと気持ちが良い、もっと頑張ろうと思えるような、相性の良い人と仕事をする。そして、その人の自己実現のために組織をどう生かしてもらえるかという発想で、会社の経営や社長業を進めていく。自分たちの強みを信じ、縁の深いクライアントとともに価値を進化させていく。それが、私が考える経営のスタンスです。
今、経営者は何をすべきか
2026.02.13
2026.03.09
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
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