前回は、「顧客を知り尽くすこと」「外部環境の本質を読むこと」の重要性についてご紹介しました。しかし、顧客理解と外部環境理解はコンサルタントとしてのスタート地点に過ぎません。そこから先、価値を設計し、届け、成果につなげるプロセスこそがコンサルティングの腕の見せどころであり、その中核となるのが「セールスシナリオ」と「価値共創」です。
日本の頭脳がシンクタンク化している
今、日本の頭脳がシンクタンク化(研究機関化)していると感じています。日本に存在するコンサルティングサービスの多くは、調査や分析、提言を中心としたシンクタンク的な内容です。もちろんそうした役割も必要ですが、前述したように、コンサルタントは価値を創りあげてこそ存在価値があります。コンサルタント自らリスクを取り、責任を持って動くべきです。世の中の優秀な人材がシンクタンク的な側に集まり、リスクを取らず、責任を負わないところで頭の良さを発揮してしまう。私は、これこそが日本の生産性を下げている最大の要因だと考えています。
コンサルタントはお客様以上にリスクを取るべきです。顧客にだけビジネスリスクを押し付け、自分は安全地帯でシンクタンクとして論じる。立場としては心地良いかもしれませんが、私はコンサルタントの価値はそこではないと思います。提案がうまくいかなければ責任を取り、自分もリスクを取る以上クライアントを選ぶ。私が目指すのは、顧客と自分たちの間に垣根をつくらない、いわば同化型のコンサルティングです。
コンサルティングの原点
コンサルティングが今のようなかたちになったのは、GMのアルフレッド・スローンがピーター・ドラッカーに「取締役会が機能しているかどうかを評価してほしい」と頼んだ場面が起点だと、私は考えています。しかし広義で見れば、諸葛亮や『孫子』の孫武のような存在もコンサルタントだったと言えます。いつの時代も、人類は道を示す人に頼ってきたのです。
私は、コンサルタントは名刺に肩書きとして書いてはいけない職業だと思っています。なぜなら、クライアントが「この人がコンサルタントだ」と認めて初めて成立する商売だからです。名刺にコンサルタントと印刷するのは、「これはブランドですよ」と自ら宣言しているようなもの。ブランドとは本来、脳内に焼き付いているイメージのようなものだと思うので、どうにも不自然に感じます。コンサルタントとは、お客様に決めていただく仕事なのです。
私がある時お客様から紹介を受けて、「うちのコンサルです」と言われたときが、自分はコンサルタントなのかと思った瞬間でした。コンサルタントという仕事の価値は、どれだけ顧客を理解し、どれだけ成果を出し、どれだけ相手に寄り添えるか、それを支える「人間力」にあるのだと思います。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
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