サーバント・リーダーシップの時代(1) 「俺が殿をやる!おまえたちは先に逃げろ」リーダーシップの神髄はここにある

2025.08.14

経営・マネジメント

サーバント・リーダーシップの時代(1) 「俺が殿をやる!おまえたちは先に逃げろ」リーダーシップの神髄はここにある

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

リーダーシップには、いくつものスタイルがあり、状況やメンバーに応じたリーダーシップスタイルをとる必要がありますが、私は現代の時代こそ、「サーバント・リーダーシップ」が必要だと感じています。 サーバント・リーダーシップは、ロバート・グリーンリーフが1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップの考え方ですが、私が実感するサーバント・リーダーシップは、単なる部下に奉仕するリーダーシップスタイルとは少しニュアンスが異なりますので、私なりのサーバント・リーダーシップの神髄を紹介します。

この「殿を務める」という武士道的な価値観こそがサーバント・リーダーシップにとって大切な土壌なのだと、私は深く共感しました。戦国時代、戦いに明け暮れたどんな武将であっても、敗戦し、命からがら撤退することがあります。その最後尾で、追ってくる敵を食い止め、自陣を守るのが「殿」です。強制ではなく自ら手を挙げて殿をこぞって争い、「俺が殿をやる。おまえたちは先に逃げろ」と、チームのミッションのために、チームメンバー全員に捨て身の覚悟をさせる。武将それぞれが殿を取り合うようなチームこそが最高のチームだと思いました。

東日本大震災では、放射能の恐怖から多くの外国人が我先にと日本を離れる中、とある外資系ホテルの支配人は、「君たちは先に帰れ。私が最後に鍵を閉める」と、従業員全員を自国に先に帰らせたそうです。それを聞いて、まさに現代の殿だと感じました。そこで全員が「その役目を私がやります」と手を挙げるのが理想のチームだと、私は思うのです。

お客様のことだけを考えて仕事に集中できるのは、とても幸せなことです。しかし、後ろからいつ矢が飛んでくるかわからず、殿の役を誰が担ってくれるのかまるでわからなければ、その組織はどうなるでしょうか。同じ会社でも部署間で喧嘩が絶えないのは、お互いへの感謝や信頼が足りないからです。

ビジネスの環境に恵まれ、「攻め」の戦略が継続できるときは、先陣を切って進むことは気持ちのいいものです。怖いものなしの心境でしょう。

しかし、リーダーが試されるのは、ピンチのときです。普段の仕事の中で、後ろから矢が飛んでくる状態はほとんどないかもしれません。しかし、ちょっとした危機やトラブル、アクシデントは、仕事にはつきものです。

そうしたときに、責任から逃れ、部下に後始末を押し付けるリーダーには、誰もついていきたくないものです。

逆に、チームメンバーが、「何があっても上司が守ってくれる」「後ろ(敵)のことは考えずに仕事ができる」「前に向かって安心して仕事をすることができる」と思っているとすれば、これほど力強いチームはないでしょう。

私は、「何かあったら、我先に火の海に飛び込む」と皆が思っているようなチームは、サーバント・リーダーシップ的な思想の下に生まれてくると思っています。

「サーバント」という言葉は柔らかく聞こえるかもしれませんが、実はその根っこにあるものは非常に力強く、危機的状況で誰も保身に走らず、仲間を支える覚悟を持ったチームを作ることを目的としています。その覚悟を醸成するのがリーダーの役割です。いざというときには必ず救ってくれる、支えてくれる。だからこそ、後ろを向かずに前だけを向いて仕事ができるのです。それこそがサーバント・リーダーシップであると考えています。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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