大手企業を対象に義務化されている「人的資本経営」について、欧米からの伝授された人的資本経営ではなく、日本人にこそふさわしい人的資本の在り方を考えます
その意味では、人を資源ではなく資本として認識するという流れ自体は合っていますし、そもそもこれは日本のお家芸でもあります。だからこそ僕は、もう一度チーム日本の人的資本経営のあり方を作るべきだと思っています。アメリカから見ると、日本人がチームを組むと、大きな力を発揮すると考えているようです。コーポレートカルチャーで勝っていくというのは一つの戦略です。チームの中で貢献することに関して、日本人はアメリカ人よりもはるかに上手だと僕は思っています。
人的資本経営の本質は「企業価値のバリューアップ」
フィルター、ファシリテーション、フォーカス、フィードバック、フォローアップの5Fモデルなど、人的資本経営を実現するためのさまざまなフレームワークが紹介されています。言葉としては面白かったり新しかったりもしますが、こうしたキーワードが先行しすぎると、どうしても表面的なことをなぞってしまい、本質的な軸がぶれてしまう恐れもあります。
これも僕の持論なのですが、人的資本経営の目的は「企業価値のバリューアップ」にあると思っています。それは、従来のものとは異なる、これからの時代のバリューアップでないといけません。無形資産の時代における企業価値のバージョンアップを人的資本経営の構成要素として考えていかないと、言葉遊びになってしまいます。
人的資本に求められるスキルとして重要なのは、一つ目が「課題発見力」です。この課題発見力は戦略性に属するものです。実際、僕が経営層や執行役員クラスのいわゆるハイパフォーマーの人材育成プログラムを担当する場合、最初に課題発見力というテーマでトレーニングをスタートします。次に戦略とは何かを考えてもらい、自社の顧客価値を徹底的に深掘りした後に、顧客提供価値を今後顧客にどう提供していくかを考えてもらいます。そこから、いわゆるマーケティング、ブランディング、セールススキルといったところにつなげていくわけです。つまり僕は、人的資本の第一歩は戦略性にあると考えています。
課題発見力を高めたら、次に必要なのは課題を解決するスキルである「解決力」です。この力には企業としてのバリューが必要ですが、これも人的資本が解決していくものだと思っています。課題さえ間違えなければ、日本の優秀なビジネスパーソンであるならば、誰でも正解を出せると思っています。特に上場企業には人材が揃っていますので、課題さえ正しく設定できれば解決に向かいます。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
