「人的資本経営」(1) 改めて、チーム日本の人的資本経営のあり方をつくるべき

2025.04.17

経営・マネジメント

「人的資本経営」(1) 改めて、チーム日本の人的資本経営のあり方をつくるべき

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

大手企業を対象に義務化されている「人的資本経営」について、欧米からの伝授された人的資本経営ではなく、日本人にこそふさわしい人的資本の在り方を考えます

なぜ今「人的資本経営」なのか

人的資本とは、個人が持つ知識やスキル、経験、創造性などが企業や社会に価値を生み出すという考え方です。経済産業省は、人的資本経営の定義を「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」としています。つまり、人を単なる頭数や人件費として扱うのではなく、その能力や意欲に投資し、企業の無形資産として生かすこと。これが人的資本経営の本質です。

昨年行われた人的資本経営に関する調査を見ると、「人的資本経営の取組進捗(経営陣の認識)」として、企業理念、企業の存在意義や経営戦略の明確化、経営戦略と連動した人材戦話の第定・実行、経営戦略人材戦略の連動、As is-To Beギャップの定量把握、知・経験のダイバーシティ&インクルージョン、リスキル−学び直し、といった言葉が並んでいます。たしかにこれらは人的資本経営の重要な要素ではありますが、すでに言い尽くされてきた感があるのも事実です。キャリア構築の支援、リスキリング、多様な就業機会の提供も今に始まった話ではありませんし、結局のところ何をもって人的資本というのか、いまだに明確になっていないような気がします。

人的資本経営については弊社でもレポート(https://heartandbrain.co.jp/service/#service_1)を出していますので、ここでは簡単に確認します。

アメリカでは近年、人的資本が企業業績に与える影響についての研究が進み、ポピュリズムの大きな波と社会貢献を企業に求めるミレニアム世代の台頭により、人的資本の情報開示への機運の高まりがありました。2020年8月には、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)が開示のレギュレーションを変更し、人的資本情報開示の強化に舵を切っています。

この背景には、「アメリカにおいて、約半世紀にわたり、企業の市場価値に占める(人的資本を含む)無形資産価値の比率が劇的に伸びていた」という調査結果があり、市場関係者に大きな衝撃を与えました。この流れは日本においても同様です。

2022年、岸田前首相が自ら唱えた「新しい資本主義」を修正し、分配だけではなく日本が成長するための戦略として、企業価値の源泉としての「人的資本」重視とその情報開示の必要性を訴えました。この方針を受け、同年8月には内閣官房が「人的資本可視化指針」を発表。2021年6月には東証が、上場企業が守るべきコーポレートガバナンスコードに人的資本関連項目を追加しました。2022年8月には、経済産業省と内閣官房の主導によって、人的資本を経営戦略の中核に据える企業を増やすことを目的とした「人的資本経営コンソーシアム」が設立されました。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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