食品スーパーの存在が、高齢期の健康維持につながる理由

2024.05.07

ライフ・ソーシャル

食品スーパーの存在が、高齢期の健康維持につながる理由

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

死亡リスクにも影響する「食品スーパー」の存在について。

「買い物難民」と聞くと過疎地を想像してしまいますが、人数では東京が最も多く、約203万人となっており、都市部でも無視できる問題ではないことが分かります。そして、小売店舗の廃業や商店街の衰退が進む今後、この問題は深刻化していく可能性が高いでしょう。

「ネット通販や宅配サービスを使えばいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、事は単に食料品が手に入ればいいというだけではなく、運動や交流、頭を使うといった高齢期の健康維持に関わることであって、残念ながらネット通販はそれらの解決策にはなりません。行政やNPO、民間企業などが移動販売や配達サービス、乗り合いバスといった策を講じて、この問題の解決に取り組んでいますが、同じ理由で十分とはいえません。


●住み替えも選択肢
これからは人口減少を背景に、食品スーパーだけでなく、さまざまな生活利便施設が減っていくでしょう。であれば、特に高齢者は、歩いていける商業施設などがある場所に住み替えるという方法も検討した方がいいかもしれません。

近くに食品スーパーがあることは、単に食品を手に入れやすいというだけではなく、よい生活習慣の実現を通じて健康維持につながるからです。商業施設側にとっても、購買力のある高齢者が増えるのは魅力的に違いありません。大きな高齢者向けの集合住宅ができたすぐ近くに、食品スーパーが新設された例も、筆者は実際にいくつか目にしています。

別の観点では、魅力的な食品スーパーが近くにあることは、高齢者住宅を評価する際の必須条件といえます。建物が豪華で、レストランなどの施設があって、その他多様なサービスが提供されていたとしても、その場で生活が完結してしまって、外出もせず家事もしなくていいような暮らしは、心身の健康にとっていいはずがありません。かえって衰えが進んでしまいます。

もちろん、食品スーパーが高齢期の問題を何でも解決してくれるはずはありませんが、ちまたにあふれる単発のサービスや商品とは違って、食品スーパーという存在には、高齢期の生活習慣をよくするための要素がいくつも詰まっていることは確かです。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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