ウェブサイトにおけるダークパターンはユーザーを欺くための「短期的には効果的な手法」だが、長期的に見れば当該企業への信頼を失うことにつながる「愚かなやり口」だ。
パターン6:Obstruction(障害物)
過度な障害を設けてユーザーが希望する行動を取らせない手法。例えば、登録は簡単にできるのに、解約の場合はとんでもなく複雑なステップを取らせるとか、カスタマーサポートに電話せねばならないのに、その電話がなかなかつながらずに結局諦めさせるなど、実に様々なパターンがある。小生も、大手通信企業やソフトウエア企業のサービスでこの手口に悩まされた。
パターン7:Forced action(強制)
ユーザーが希望の行動を行うために、望ましくないアクションをユーザーに強要する手法。例えばCookie同意のポップアップ確認ボタンをクリックしないとコンテンツを閲覧できないとか、商品の情報を見たいだけなのに、個人情報を入力してアカウントの作成を強制するようなケースがこれに該当する。グローバルなIT企業や会計士企業で未だにこのやり方を採っているところも少なくない。
さてこうして見てくると、意外と大手企業や有名ECサイトでもダークパターンを平気で使っているところが少なくないことに気づくはずだ。
しかしダークパターンに引っ掛かったことに気づいた、または解約に難儀したユーザーからは「二度とこんな企業から買うもんか」と反発される可能性が高い。その仕掛けに気づいたユーザーからは少なくとも不評を買う。へたをするとSNSで炎上しかねない。碌なことはない。
それなのになぜこんなに「流行」していて、しかもずっと続けているサイトが多いのだろう。
ウェブサイトのデザインを請け負っている知人に尋ねてみると、企業の担当者に「そもそもダークパターンがいけないとの自覚がない。むしろ有用なテクニックだと勘違いしている。そのため実際に依頼されることもある」とのショッキングな回答が返ってきた。
その背景として、企業担当者は「短期的成果を上司から迫られている」ので「安易に他社を真似ることに躍起」だというのが実情のようだ。ウェブコンサルがこうした手法の「ノウハウ伝授」をウリにしているケースもあるようだ。それで同じようなやり口が各業界で広まっているのかと納得がいった。
しかし紹介してきたように、ダークパターンというのは犯罪ではないのかも知れないが、日本人が大好きな「誠実さ」とは真逆のやり口だ。短期的には成果を上げるかも知れないが、いずれ痛いしっぺ返しを食らう恐れが高い、麻薬のようなものだ。
でも担当者レベルではどうにも自発的に脱却しにくいのも実情だ。経営者諸氏および事業責任者は早急に、自社のウェブサイトがダークパターンを使っていないか、緊急点検の号令を掛けるべきだろう。マーケティング
2015.08.27
2017.09.20
2020.06.03
2020.08.26
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
