今頃、何でコスト削減なの? 時代はインフレであり、成長と賃上げをいかに好循環していくか、でしょう? しかし、そういう時代であるからこそ、従来のサプライヤ交渉による単なる単価の削減ではない、コスト削減2.0が求められているのです。
それでは、令和時代のコスト削減手法は、どのようなものになるのでしょう。
私はこの新しい時代のコスト削減手法を「コスト削減2.0」と呼んでいます。「コスト削減2.0」とは従来の調達購買部門とサプライヤとの間で進められた購入単価の低減だけではなく、自社のユーザー部門(開発部門)や、サプライヤと協業して取り組むコスト削減手法です。
これを前提として、以下の4つの手法があげられます。
1.顧客要求内容を含めた仕様やサービス適正化
2.コストダウン手法の社内展開
3.(コストだけでなく)ROIの適正化を図る
4.(購入単価だけでなく)トータルコストの適正化
これらの手法は、社内ユーザーやサプライヤの協業が必要となります。例えば、1.顧客要求内容を含めた仕様やサービス適正化、については、従来は顧客の要求は天の声であり、それを前提にしてサービスや仕様を決めてきたものの、コスト高につながっていた過剰な要求品質・仕様・サービスを適正化することで、低コストを実現する、手法です。
また、2.コストダウン手法の社内展開は、例えば購買部門が指導し、全社でVE・VA活動を進め、コスト削減などにつなげていくやり方になります。ある企業では、購買部門がトレーナーとなり、VE・VA手法の社内展開を行い、コスト削減の実行は、各ユーザーが推進するなどの取組みを行い、全社でコスト削減活動を進めることで、大きな効果を生み出しました。
4.(購入単価だけでなく)トータルコストの適正化、については、様々な手法が上げられます。ある企業では、商品販売後お客様都合による返品を無条件で受入れており、返品商品のほとんどを廃棄していました。その廃棄コストは売上の約4%を占めていたのです。この企業はWeb販売が中心のビジネスモデルであり、無条件で返品を受入れるビジネスモデルが一般的だったので、それだけのコストが発生しました。しかし、返品といってもお客様の注文ミスなどによる返品が多く、パッケージを新しくしたり、バラ品にすれば、販売可能な商品も多かったのです。
この企業は返品センターを立ち上げ、メーカーへ返品商品引取りの交渉を行う、再梱包して再販する、バラ品として販売する、B級品販売サイトを立上げ再販する、などで、廃棄損を60%減らすことに成功したのです。この会社は、これによって約2.4%コスト削減を実現することに成功しました。
このような、目に見えにくいトータルコストの適正化の取組みは他にも上げられます。特に見えにくいのは、サプライヤのコスト削減につながるような取組みであり、これを共同で進めていくことも重要なポイントです。例えば、サプライヤ標準品や標準的なサービスの採用などによる仕様の見直し、物流費だけでなく、生産コストの適正化にもつながるようなMOQ見直し、サプライヤの物流コスト低減につながるような受入れ側の取組み、サプライヤに在庫を持たせるのではなく、受入れ側で在庫を持つなどの取組みで、目に見えにくいサプライヤのコスト削減につなげていくなどの取組みです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。