成城学園初等学校(小学校)の憂鬱:脆弱な父兄会と上層部の専横

画像: 成城学園初等学校新校舎ページから

2023.04.12

ライフ・ソーシャル

成城学園初等学校(小学校)の憂鬱:脆弱な父兄会と上層部の専横

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/成城学園は、もとより父兄が設立し、その広く厚い支援によって独自の校風を保ってきた。しかし、問題は、この温室のような学校が底抜けの性善説で成り立っていること。それは、長年の伝統で培われてきたものだが、ここに毒が入ると、対応の仕方がわからず、すぐに振り回されてしまう。/

成城学園は、玉川学園と違って、創立者一族の世襲支配ではなく、もとより父兄が設立し、その広く厚い支援によって独自の校風を保ってきた。しかし、問題は、この温室のような学校が底抜けの性善説で成り立っていること。それは、長年の伝統で培われてきたものだが、ここに毒が入ると、対応の仕方がわからず、すぐに振り回されてしまう。校長の渡辺共成くんが右往左往し、今日のひどい結果を招くことになってしまったのも、彼がまさにそういう典型で、人柄が良い(だけ)の成城っ子だから。

毒は、大学から入った。戦後にできた成城大学が、初等・中等教育の独自性を核とする成城学園にとって、まったくの異物だった。これは、もともとは中等教育の七年制大学予科で、現在の中学~大学教養課程に相当するものであり、いずれかの帝大への進学が当然だった(つまり、当時の成城学園は、野卑なバンカラの一高に対して、東高、武蔵と並ぶ帝大へのジェントルマンエリートの進学校であり、それが新たに誰でも大学という一貫教育を掲げた玉川学園の分離を引き起こす)のだが、戦後の私立濫立に便乗して大学成りすると、広く外から地方の大学生を集め、また、旧帝大進学に及ばない新制高校の卒業生の受け皿となった。こうして、成城学園としての気風は、何倍にも水で薄められ、カネの匂いがする半端な中堅お坊ちゃま・お嬢ちゃま私立の一つとして、位置づけられた。

それでも当初は、成城大学の先生には、成城関係者、つまり、成城の町の文化人や成城学園の父兄で元旧帝大教員(以前は東大の定年が60歳だったため)などが多かったのだが、やがて東大閥の出城ポストと化し、学園側は人事コントロールを失っていく。また、戦後教育の自由化への急旋回で文部省(現文科省)の影響も強く、東京帝大出の財界人を理事長に担ぎ、これらの外部の連中が主導権を握った理事会が、ステークホルダーである「父母の会」を形骸化し、本来の成城学園、つまり、幼・初等・中高を支配下において、成城大学への進学者を確保するための下部機関へと変質させていってしまう。(成城大学は、本来は初等学校付属大学であって、その逆ではない。)

成城学園の同窓生らしい品格として、あまり外に向かって騒ぎ立てたりはしなかったが、これまでも伊勢原キャンパスの購入と処分、新学部設立の迷走、成城キャンパスの全面的な建て替えなど、上層部のキナ臭い話は多く、数世代に渡る同窓生のウワサ話として、困ったことね、ほんとにイヤだわ、と伝わってはくるのだが、いかんせん、これまで、こういう毒々しい連中にあまり接してこなかったこともあって、だれも、どうしていいのかわからず、連中のほしいまま。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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