​人口減とビジネスモデル資本主義の終わり

2023.03.03

経営・マネジメント

​人口減とビジネスモデル資本主義の終わり

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/20世紀はビジネスモデル資本主義、つまり、製造販売ノウハウを創り、バイトやフランチャイジーを指示管理することで、全国展開チェーンとしての知名度と価格訴求力を確立確保し、繁栄拡大を謳歌してきた。だが、連中にお客さま気分でぶら下がられても、組織が重くなるだけで、その調整コストと管理リスクで利益が喰い潰されてしまう。/

コロナ前の予想でも、10万人未満の市町村はのきなみ人口を減らし、2040年には1万人未満の市町村が40%に迫るとされている。1万人市町村(千葉県大多喜町や神奈川県中井町の規模)でかろうじて1店舗が成り立つとすると、それは、およそ現状よりさらに1割が閉店撤退に追い込まれる、ということ。これより大きな都市で店舗が残ったとしても、その売り上げはガタ落ちになる。まして、人手不足、資本不足で、担い手がいないとなると、ビジネスモデルを売って儲けるというビジネスモデルは、どうやってもムリがある。

企業が社会雇用、投資機会を生む、という18世紀来の常識と責任には反するが、企業が企業として存続するためには、今後はむしろ単純労働者の労働力、単純出資者の資本力に依存しないものになる必要があるだろう。バイトやフランチャイジーにお客さま気分でぶら下がられても、組織が重くなるだけで、その調整コストと管理リスクで利益が喰い潰されてしまう。

自分たちでカネを出し、自分たちで知恵を絞り、自分たちで汗を流す。実際、地方では、特産物の独立農業組合などとして成功しているところをいくつも聞いている。しかし、それらはそれぞれに唯一無二の独自存在で、そのメンバーだからこそできたもの。ビジネスモデルとして、そのまま他のところに移植などできない。また、生身のメンバーである以上、いずれも年をとっていくから、ゴーイングコンサーンとして、うまく世代的な新陳代謝ができるかどうかも、将来的には未知数だ。

だが、就職さえすれば安泰だったこの数百年の方が異常だったのだ。この春、大手に入った新人も、これから就活をする学生も、また、いま企業の中に安穏としている人々も、これからくるビジネスモデル販売というビジネスモデルの崩壊という激震に備えて、自分自身が何ができるか、何を「出資」し、どうやって自分が「現場」で利益を生み出せるか、よく考えておいた方がいい。人を指示管理しようにも、もう指示管理される人などいない。ただ減る一方。もうすぐ本物の氷河期がやってくる。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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