日経MJが4月2日に報じたように、野菜ジュース市場の戦いが激化している。その中で台風の目となりそうなのが、サントリーの「野菜カロリー計画」だ。 その商品の特徴は実はCMソングで余すところなく伝えられており、それはそのままマーケティング・エクセレントなサントリーのお家芸である差別化戦略を表わしている。
森三中の村上知子が熱唱するCMソングの歌詞をここに全文掲載させていただく。
<あのね 野菜ジュースのカロリーは 意外に高い~、高いよ~ びっくらこいた~ びっくらこいたぁ~>
<でもね 野菜ジュースの栄養は 意外に捨てられて~いた~ びっくらこいた~ 泣きたくなったぁ~>
名前の由来である「カロリー」。健康にいいと信じて飲んでいる(事実いいのだが)野菜ジュース。しかし、その健康に寄与するという特性故、確かに意外とカロリーのことは忘れがちだ。そこを巧みに<意外に高いよ~>と新たな商品選択のポイントとして訴求している。ちなみに、カロリーはライバルのカゴメ「野菜生活100」が200mlで68kcal、伊藤園「1日分の野菜」が同量で75kcalなのに対して、同量で62kcal(100gあたり45kcal)。加えて野菜のなかでも糖質分の少ないニンジン、ホウレンソウ、キャベツなど8種類を選んだことにより、一般の野菜飲料より糖質分20%おさえたという。
このような新たな軸、ポジショニングを取るのはサントリーの得意技だといえるだろう。有名なのはDAKARA(ダカラ)だ。スポーツドリンクの後発であるが故に、ポカリスェットやアクエリアスの「スムーズな水分の吸収」に対し、「老廃物の排出」という全く新しい軸をぶつけたのだ。とぼけた<高いよ~>という歌詞には強力な差別化要素が込められているのだ。
歌詞の二番も実は重要なのだ。
<野菜ジュースの栄養は 意外に捨てられて~いた~>だ。何を言いたいのかというと、一般に野菜ジュース(野菜+果汁)は搾った液である。それをサントリーはジュースを搾った後の野菜も使えるよう野菜を丸ごと細かくつぶしてピューレ状にし、食物繊維などの栄養も摂れるようにしたという。それでいて、甘すぎず、濃すぎず、さらりとした味わいに仕上げるという、びっくらこく技術を使っているのである。
ここでも重要なのは、<でもね>と語りかけ、「今までたっぷり野菜を摂るように飲んでいた従来のジュースでは、丸ごと野菜を摂れていなかったんだよ」と消費者に新たな判断軸を提示していることだ。
サントリーはかつて野菜飲料から撤退の憂き目を見ている。2000年に「緑黄色野菜ありがとう」を上市したものの、競合商品との差別化ができなかったためだ。今回はそのリベンジとして、満を持しての参戦したはずだ。
日経がMJ伝えるように、現在各社は流通チャネルの壮絶な棚摂り合戦を展開しているという。しかし、サントリーも「営業力では負けていない」と紙面でコメントしている。
そうなると、この明確な差別化軸を持った商品力が遺憾なく発揮されるはずだ。
「野菜カロリー計画」の売れ行きにしばらく注目してみるのも面白いだろう。
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2008.04.09
2008.05.06
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。