2022年は企業経営における歴史的転換点になったかも知れません。GAFAなどの巨大ITプラットフォーマーによる支配が終わり、サプライチェーンの構造改革や調達改革などで強みを持つ企業が、業界内でも好業績を上げる時代になりつつあるのです。
様々な予測不可能な事態が起こりうる、VUCAの時代には、サプライチェーンのコスト競争力だけでなく、継続性を優先する体制に切り替える柔軟性が求められます。このように、2022年という年はサプライチェーンの構造や柔軟性で競争優位を確保する時代になったと言える
でしょう。
サプライチェーンの構造や柔軟性を持つことは経営視点からの要請ですが、調達購買部門の取組みとして、考慮すべきことは何でしょうか。以前、私はサプライヤ供給力不足への対応について、1.在庫を持つ 2.マルチ化 3.サプライヤとの関係性づくり の3点を述べてきました。今回の「モノが買えない時代」において、調達購買部門は3つの重要性に気が付かされた年になったのです。
それは、計画の重要性/在庫の重要性/サプライヤとの関係性構築の重要性、この3つになります。
従来、調達部門はいくらで買う、にだけフォーカスしてきましたが、いくつ買う、については気にもしていませんでした。購入数量を計画し、それを提示し、確保する、極めて当たり前な話ですが、モノを買う上で、必要な計画機能が欠如していたのです。
次は在庫の重要性です。従来日本企業はJIT信仰が強く、在庫は悪と捉えていました。しかし、今般の「モノが買えない時代」においては、長期発注、先行発注などで将来の在庫をサプライヤにもってもらう、自社で在庫を保持するなどの必要性が出てきたのです。これも、極めて当たり前な話ですが、どれだけ在庫を計画的に持てばよいのか、検討~決定する機能も欠如していました。
最後のサプライヤとの関係性構築の重要性、ですが、これは私が以前から述べ続けていることであり、一部の先進的企業においては、サプライヤマネジメントの導入として、進められ始めています。しかし、未だに双方向の取組みではなく、買う立場の上から目線の取組みに終わっている企業も少なくありません。
このように、3つの重要性に気が付いた調達購買部門が主導して、企業経営におけるサプライチェーンの重要性をマネジメントに理解させ、競争力強化につなげていく必要性がでてきたのが2022年だっとのではないでしょうか。
昨今のモノが買えない状況は、少しずつ緩和されるときが来るかもしれません。しかし、モノが買えないことを一時的な事象として捉えるのではなく、構造的な変化であることを理解し、具体的な対策に乗り出さなければ、その企業は競争力を失っていくでしょう。事業環境の変化に速やかに対応できるサプライチェーンを構築することが重要であり、サプライチェーン構造改革は待ったなしの状況なのです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。