自己犠牲のサービス経営から卒業するバランスチェック

2022.10.17

経営・マネジメント

自己犠牲のサービス経営から卒業するバランスチェック

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

「良いサービスを安く」「NOと言わない」そろそろ日本のサービス経営は自己犠牲を前提にした事業から脱却しなければなりません。人手不足を解消しようと効率化やDXを進める一方で、サービスの価値がどんどん削がれている現状もあります。顧客を犠牲にする押し売りと囲い込みの顧客拡大から抜け出せずにいる企業も。サービス経営が、顧客・従業員・事業のどこかが犠牲になってないか、バランスチェックをしてみましょう。

AIやRPA ,IoT など、サービスの技術革新が進んでいます。先端技術の活用は、バックオフィスにとどまらず、顧客接点にも展開されるようになってきました。こういったテクノロジーを活かすチャレンジには大きな可能性を感じます。一方で、価値ある活用ができていないガッカリ事例も多く見かけます。サービス設計なしに、闇雲に先端技術を導入したところでうまくいかないのは当然です。あえて人が行う業務と、先端技術を活用すべき業務の組み立ては十分にできているでしょうか。

「製造業のサービス化」はサービスをおまけ扱いしていないか

「モノからコトへ」と言われて、以前から「製造業のサービス化」が経営課題になっています。しかし「これからはサービスも頑張ろう」という程度に捉えてはうまくいきません。このテーマはむしろ、「製造業がサービス業に生まれ変わる」と捉えるべきです。製造業を「モノがつくれるという強みを持ったサービス業」と捉え直すことから始めるのです。モノづくりとサービスを別物扱いせず、製造業の本業としてサービスを捉える時代になりました。

地域社会がげんなりする「地方創生サービス」「地域密着サービス」

地方の過疎化が進み、地域社会や地域経済の在り方が見直される中で、地方創生やコミュニティー形成を掲げるサービス事業が増えています。しかし中には、地域の資源を集客のためのネタにして、結局のところ自社だけで顧客を独り占めしているケースもあるようです。 地域密着型のサービス事業は本来、その事業が地域の誇りになったり、地域から応援される事業であるべきです。地域密着型サービスの事業者は、地域に身内として受け入れられているでしょうか。地域から愛着や応援が集まる 事業こそ、“地域密着”だといえます。

“選ばれ続ける”事業にステージアップせよ

これまで説明してきたように、日本のサービス事業では様々な取り組みが進められていますが、どこかが犠牲になることで苦戦しているケースが多いものです。顧客、従業員、事業の三者の目で見て、価値あるサービス事業だといえるでしょうか。加えて地域に根差した事業では、地域社会から応援されることも欠かせません。顧客、従業員、地域や社会から、積極的に選ばれ続けるサービス事業にステージアップすること。これこそ事業の成長力や競争力になり、サービス競争の新時代を生き抜く強さになります。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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