モデル(model)とは模型を意味します。その字のごとく、「実物を模して(=真似て)形にしたもの」です。物事の構造や仕組み、関係性などを模型として単純化して表し、とらえやすくすること。それが「モデル化」です
【設問】
■作業1:「仕事の報酬」として思い浮かぶものをいくつもあげなさい。
■作業2:それら仕事の報酬を類型化し、1枚の図(絵)にまとめなさい。
「報酬」という言葉を辞書で調べると「労働に対する謝礼のお金や品物」などと出てきます。確かに報酬の第一義は勤労の対価としての金品です。しかし、仕事がそれを成し遂げた者に与えてくれるものは、金品だけではなさそうです。
研修の場合まず、作業1をグループでブレーンストーミングをやります。各自が付箋紙に仕事の報酬だと思うものをどんどん書き出します。すると予想以上にたくさんの付箋紙がテーブルに並ぶので受講者たちは驚きます。
例えば下図のような報酬が出てきます。この書き出しがどれくらい豊かにできるかはグループ・個人で差が出ます。仕事の報酬と聞いて、イマジネーションをどこまで掘り下げ広げられるかは、能力の差というより、仕事に対する意識の深さの差かもしれません。「仕事は給料を得るためだけのもので、できるだけラクにすませたい」と構えている人は、やはり豊かに答えは出てきません。
さて、それで肝心なのが作業2です。出てきた仕事の報酬の小片をどう類型化し、全体として1枚の図に表現するか。これはもっと大きな差が出ます。
受講者から出てくる典型的な答案を1つ紹介しましょう(下図)。ヨコ軸に「物質的な報酬/精神的な報酬」、タテ軸に「自分でためるもの/他者から受け取るもの」を取り、2軸平面図としてまとめたものです。4象限の各所に類型化された報酬群が配置されています。軸を切る目線も根源的なところに下りていっていますし、類型化も適当です。これくらいできれば、及第点といったところでしょうか。
メタファーを用いる図は記憶に残りやすい
研修を長くやっているといろいろな名作に出合います。1つの概念をめぐってさまざまなモデルが出てくるのが、コンセプチュアル思考のおもしろいところでもあります。受講者ワークのなかからユニークな答案をさらに3つ紹介しましょう。
答案例[2]と[3]は「比喩図」の優秀例です(下図)。それぞれ「ヒト」と「樹木」をメタファーとして報酬群をいろいろに当てはめています。こうした卑近なものになぞらえる図は注目されやすく、記憶に残りやすいという利点があります。
答案例[4]も独自の目線が入っている点で印象に残るものです(下図)。この図では「利己/利他」という基軸上に報酬群が並べられました。利己/利他という根源的要素を掘り出してきた着眼力と、ライフワークと対になる「ライスワーク(コメの仕事=食うための仕事)」の言葉選び、そして中央に置いた「すべての報酬は自己成長に通じる」というコアメッセージは、全体として思考の強さがあります。
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2009.02.10
2009.10.27
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。