ピアノ需要は、その国民の一人当たりGDPが一万ドルに達するまで増え、それを超えるとピアノ需要は減少して行く。かの大前研一氏が見つけた法則を実践して、大成功している企業があるという。
では実際にこの国の二輪車マーケットがどうなっているか。2005年
に登録ベースで100万台を超え、07年には約170万台に達した。年率
換算で20%近い成長となっている。まさに大前流「GDP3000ドル」
の法則があてはまっているわけだ。これにいち早く目を付けていたの
がHONDAである。HONDAは今や同国で7割以上のシェアを握る
トップメーカーとなっている。
HONDAはヤマハとは異なり別に二輪車教室を開催したわけではな
い。しかしブラジル特有の「コンソルシオ」と呼ばれる頼母子講を巧
みに活用した。コンソルシオとは一種の共同購買システムである。す
なわち複数の購入者がお金を出し合い、毎月くじ引きであたった人か
ら商品を引き取っていける。
コンソルシオを使えば、メーカーとしては毎月、商品代金をきちんと
受け取りながら一台ずつ着実に販売できるので回収リスクがなくな
る。仮定の話になるが、もしブラジルでHONDAが二輪車教室を展開
し、ローン制度を導入していればもっと販売台数は増えた可能性もあ
るだろう。
大前流「GDP一万ドル」の法則は、今後も適応できる可能性があ
る。ピアノに関してはロシアが現時点で一人当たりGDPが約7000ド
ルに達しようとしている。今から音楽教室をモスクワなどの大都市で
展開していけば、ロシアのピアノマーケットを独占することも可能だ
ろう。
またいわゆるBRICs諸国については、2006年度の一人当たりGDPは
次のようになっている。
インド:約800ドル
中国:約2000ドル
ブラジル:約5600ドル
ロシア:約7000ドル
いずれブラジルでピアノマーケットが起こり、インドでも限定された
エリアで同じような現象が起こる可能性が高い。ポイントは日本のよ
うな面積の小さな国ではなく中国、インド、ロシアなどの大国を相手
に考える場合は、国全体の値ではなく地域ごとの値に注目することだ
ろう。
そして大前氏が予言したのはピアノと二輪車についてのようだが、こ
の手のいわゆるぜいたく品マーケットについては、他にも新たな法則
を考えることができるのではないだろうか。
たとえば海外旅行マーケットならGDP6000ドルぐらいでどうだろ
う。あるいは自動車マーケットならGDP2万ドルぐらいか。エステや
フィットネスマーケットは意外に1万ドルを超えるかもしれない。こ
のあたりの法則は日本や欧米、そして韓国といった国々の過去の推移
を調べていけばきちんとした数字が出るように思う。
※参考資料
日経産業新聞2008年2月20日付24面
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