ピアノ需要は、その国民の一人当たりGDPが一万ドルに達するまで増え、それを超えるとピアノ需要は減少して行く。かの大前研一氏が見つけた法則を実践して、大成功している企業があるという。
その企業とはヤマハである。同社は2003年、上海にピアノの販売会
社を設立して以来、その売上高は年率20%で成長しており、中国で
の現在の売上高が120億円に達しているという。これが実に大前研一
流「GDP一万ドル」の法則を実践した結果となっている。
とはいえ中国の一人当たりGDPが一万ドルに達しているわけではな
い。いくら成長著しいとはいえ、まだそこまでにはなっていない。
2006年時点で中国全体としてははまだようやく2000ドル弱のレベル
である。ダントツの経済成長率をキープしてはいるが、一人当たりと
なると人口が13億人もいる国の平均値はそれぐらいにしかならな
い。
しかし中国は日本以上の格差社会である。中国では資産1000万以上
の人を富裕層と呼ぶらしいが、富裕層はすでに5000万人を突破して
いるという。これまた相対的な人口比でみれば、富裕層は全人口の
4%ぐらいにしかならないが、注目すべきは絶対数5000万人という
ボリュームだろう。
上海、広州の中国最先端二都市では、すでに一人当たりGDPは一万
ドルに達しており、現在8000ドルとされる北京が一万ドルに届くの
も時間の問題となっている。ちなみに上海の人口が約2000万人、広
州約1000万人、北京が2004年で1500万人である。この三都市だけ
で合計すれば人口4500万人のGDP一万ドル経済圏があることにな
る。
ヤマハはここに目を付けた。大前氏のセオリーに従うなら、中国には
巨大なピアノマーケットがあるはずである。そこで同社は広州、上
海、北京の三都市でピアノ教室を開いた。これが見事に成功する。ピ
アノ教室を開く狙いは、ピアノの楽しさ、素晴らしさを体感させ、同
時にヤマハブランドに対するロイヤリティーも高めることにある。こ
の音楽教室の生徒は、ヤマハにとってほぼ顕在化した顧客といってい
い。
その結果、目論見通りの成果をヤマハは中国で上げている。セオリー
通りの展開で成功したモデルケースといえるだろう。
実は大前流GDP「一万ドル」の法則にはもう一つのモデルがある。
ピアノマーケットは一万ドルが基準値となるが、3000ドルが指標と
なるマーケットがあるのだ。二輪車マーケットである。これに目を付
けて成功しているのがブラジルでのHONDAのケースだ。
一人当たりGDPが3000ドルに達すると二輪車マーケットが需要の
ピークを迎える。これが見事に当てはまったのがブラジルだ。ブラジ
ルの一人当たりGDPは2006年度で5600ドルに達している。すでに
2004年に3200ドル、つまり二輪車マーケットが活性化する臨界値を
超えた。つまり大前ルールによればブラジルでは、今から4年前に二
輪車マーケットができていたことになる。
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