新型コロナウイルスが拡大する以前から、中小企業での事業承継問題は大きな課題だったが、このコロナ禍で、さらに大きくなっているようだ。新型コロナウイルス拡大による企業の休廃業リスクはさらに高まっており、事業承継はこれまでどころではない事態となっている。
ただし、事業承継を「最優先の経営上の問題と認識している」企業では 73.5%が「計画がある」としており、意識の大きさが、実際の計画の進行に大きな影響を与えている。
事業承継が進まない大きな原因は、やはり「後継者の育成」問題のようだ。
事業承継に関して「計画があり、まだ進めていない」「計画はない」とした企業は、どのような心配をしているかというと、「後継者の育成」(55.4%)、「後継者の決定」(44.6%)と続き、後継者がいない、育てられない、決められないことが大きな要因となっていることがわかる。
事業承継が進まなければ、次に考えられるのはM&Aだ。事業は継続されるので、M&Aもある種の事業承継と言えるのかもしれない。
帝国データバンクの同調査では、M&Aに関する考えも聞いている。企業の37.2%が事業承継を行う手段としてM&Aに関わる可能性があると考えているという。また、「近い将来においてM&Aに関わる可能性はない」は39.2%、「分からない」は23.6%となっており、それぞれ、同じ程度に分かれる結果となっている。
大企業、中小企業、小規模事業者と、規模別でみると、大企業のほうが将来の生き残り戦略を探るなかで、M&Aを検討しているようで、M&Aへの興味は高いようだ。資金や金融関係、M&A関連事業者との付き合いなど、大企業に優位なことは多い。むしろ、それほど大きな差はないことに驚く。
ただし、おそらく、同じ「M&Aへの関わり方」でも、大企業の場合は「買い手志向」、中小・小規模では、「売り手志向」なのではないかと思われるが、中小・小規模事業者においても、後継者不在のなか、考えざるを得ないことなのだろう。
事業の収益が出ているのであれば、後継者が本当にいないと判断したならば、もはやM&Aに頼らざるを得ないのが現状なのかもしれない。
60歳代以上にもかかわらず後継者がいない事業者は、赤字の比率も高いという。取引面で見ても、後継者がいなければ、その事業者との信用限度額は引き下げられ、これからのビジネスに直結する。
もちろん、これら事業者の中には、今回のコロナ禍で、ダイレクトに打撃を受けた、観光、飲食の事業者も少なくない。2度目の緊急事態宣言を受けて、廃業を決断する経営者は少なくないだろう。
しかし、社会の問題はそれだけではない。コロナ禍による打撃は、事業承継の問題にも確実に及んでいる。
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